ヘッドハンティング研究

世代や業界で異なる、ヘッドハンティングされやすい人材

世代や業界で異なる、ヘッドハンティングされやすい人材

ヘッドハンターとそのクライアントが求めているのは、優秀な人材。ですが、一口に「優秀な人材」といっても、その理想像は世代によって、さらに業界によっても異なります。20代、30代、40代と、世代ごとの転職傾向も踏まえて、それぞれの世代でどのような人材が求められるのかをお話しします。

ビジネスマンの能力は、年齢とともに変化する

ヘッドハンティングでは20代から40代、さらにそれ以上の幅広い年代のビジネスマンが対象となります。そして、どの世代が対象になりやすいかは、ビジネスマンが成長していく過程と密接にリンクしています。

フレッシュマンとして社会に出てきた若者は、まずビジネスとはどういうものかを学びます。多くの場合、実務経験はゼロに等しく、それこそビジネスマナーから覚えなくてはなりません。その一方で、吸収力や集中力は極めて高いため、学んだことは片っ端から身に付け、ひとつのことにじっくり打ち込むこともできます。何より、将来的な伸びしろは最も高いのですから、どのようなビジネスマンを目指すのか、自由にプランニングができる世代です。

30代になると、20代で作り上げた基礎を活かし、現場での行動力と実践力を発揮するようになります。プレイヤーとして動くことはもちろん、そのポジションにいながらも事業を動かしていくような、力強さを発揮する時期でしょう。

40代では、プレイヤーとしてよりもマネジメント能力を発揮する場面が増えてきます。さすがに吸収力や集中力では20代の若者には及びませんが、その一方で長い経験によって培われた判断力や大局観が活きてくる世代です。これ以上の世代になると、事業全体あるいは組織そのものを率いていくリーダーとしての手腕が問われるようになっていきます。

世代別・ハンティングされる人材の傾向

ヘッドハンターがクライアントからオーダーされる「理想の人材像」は、その業界や世代によって、さらにクライアントの人的資産状況によって異なります。ですが、世代によってある程度の共通項は確かにあります。

例えば20代。この世代のハンティング依頼は、一部の業界を除いては一般的ではありません。ですが、「20代の人材に求められる能力」を考えてみると、まずは柔軟性や適応力でしょう。まだビジネスマンとして固まり切っておらず、それゆえに発揮できるこうした能力は、人材を求める側からすれば魅力ですし、将来的なポテンシャルにも期待が持てるというものです。

30代から40代では、ある程度のマネジメント経験があることが要求されます。規模の大小はあったとしても、新たな事業やサービスを開発したり、経営目線でものを考えたりできる人材が、ヘッドハンティングの対象者に共通する特性です。この年代のビジネスマンは、マネジメントを指向するかスーパープレイヤー(あるいはスペシャリスト)を目指すかという分岐点を迎えることが多いものです。どちらを選ぶかは人それぞれですが、ヘッドハンターの目線から言えば、後進の教育やマネジメント能力、事業を牽引していくパワーに対するニーズは根強く、またそうした依頼は数の上でも多数に上ります。
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業界によっては特殊な事情もある

ここまでお話ししたのはあらゆる業界にほぼ共通した一般論ですが、個々の業界によっては、それぞれ特殊な事情があることも少なくありません。そうした業界では求める人材の世代やスキルなどについても、他業界とは違った注文がつくことがあります。
例えば建設業界。ここには「年齢構成の偏り」という業界の事情があります。

建設業界が最も賑わっていたバブル期、企業は大量に人材を採用し続けていました。そのため、現在のところ、40代以上の人材は豊富にそろっています。また、リーマンショック以降も新卒採用を増やしていますので、若手の層もそれなりに確保できています。ところが、そのあいだをつなぐはずの30代から40代までの世代が、抜け落ちたように不足しているのです。これでは「10年後に会社を支える人材」が足りなくなってしまいます。

建設業はさまざまな工事を行うことで対価を得るわけですが、その工事を行うためには、施工管理の有資格者を現場に配置しなくてはなりません。つまり「現場監督」ですが、この任を担える人材がいないと現場を動かすことができず、受注そのものができないということになってしまいます。

このような事情から、建設業界では30代から40代の即戦力人材の確保が急務となっています。少しずつですが景気は回復しつつあり、東京五輪 の開催によって需要が高まる中、この傾向はますます加速していきそうです。

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IT業界では20代のヘッドハンティングが盛ん

IT業界に目を移してみると、20代のヘッドハンティングが盛んです。盛んというより、すでに主流といっても良いかもしれません。アドテクエンジニア、ウェブプロデューサー、ゲームディレクターなどの若者たちが、ヘッドハンティングの対象となっています。

この業界は進化が速く、そのスピードは他業界の比ではありません。その中でトップを走れるかどうかが、業績を大きく左右します。そこで、成長の芽を誰よりも早く見つけ、すさまじいまでの速さでビジネスにまで育て上げていく。そうした土俵では、30代・40代の経験などはあまり役に立ちません。むしろ、子供のころからインターネットが当たり前で、ITになじんで育ってきた20代の若者のほうが、遥かに高いポテンシャルがあるのです。

そのため、IT分野での新たな技術、新たなサービスを生み出したいと考える企業のニーズは、自然と若いITスペシャリストに目を向けることになります。

このように、ヘッドハンターが追い求める「理想の人材」は、業界によってその理想像が異なります。ですが、技術やサービス、あるいは事業をみずから生み出し、推進していくパワーを持った人材こそが、求められる理想像であることは間違いないでしょう。

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