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賃金制度見直しのベストタイミングについて考える

賃金制度見直しのベストタイミングについて考える

企業の経営者や人事担当者の方にとって、賃金制度の見直しのタイミングはかなり難しい問題です。定期的に賃金制度を見直すと、人件費などの計算が難しくなり思わぬ支出に繋がるかもしれません。一方、賃金制度をずっと見直さないでいると、今度は社員や従業員のモチベーションを下げてしまうことになります。ここでは、賃金制度を見直すタイミングと、賃金制度見直しのメリットについて見ていきましょう。

賃金制度見直しのベストタイミングは法改正時・組織の改編時など

賃金制度の見直しを考えている企業にとって、まず考慮すべきは賃金制度見直しのタイミングです。賃金制度に変更を加えるべきタイミングはいくつか考えられ、その時々に応じて臨機応変に賃金制度を変えていくことが重要となります。

まず考えられるタイミングは、法改正があった時です。労働基準法やその他の法律や条例はずっと同じというわけではありません。時には企業に調査やノルマが義務付けられたり、労働時間に制限が課せられたりすることがあります。その際、ただ単に新しい法律や条例に合わせるだけではなく、その機会を利用してより自社にフィットした賃金制度に変更することができるでしょう。

法改正に合わせて制度を変更し、さらにその後自社の実情に合ったものに変更するとなるとかなりの手間がかかります。法改正というベストタイミングを逃さずに、制度を見直すようにしましょう。

さらに賃金制度を見直せるタイミングは、会社の創業年数や従業員数のキリが良い時です。これは法律や業績と全く関係のない部分ですが、創業10年や従業員数50人達成などのタイミングで賃金制度を見直せます。賃金制度に見直しを社員や従業員に納得してもらう上で、キリの良い数字は役に立つでしょう。

組織の改編のタイミングで賃金制度を見直すこともできます。新規の部署が立ち上がった、ある部署がなくなった、社名が変わった、事業の整理が行われたなど、「変化」が感じられる時に賃金制度の変更を行うとスムーズに見直しが行えます。

賃金制度の見直しを、特に給与の引き上げのために行うのであれば、会社の業績が良い時に行うよう努力すべきです。給与の引き上げのためには会社の財政に余裕がなければなりません。もし賃金制度の見直しを後回しにしてしまうと、見直しをしたい時には余裕がなくなっているということもあり得ます。見直しのタイミングを逃さないように慎重に検討する必要があるでしょう。こうした企業側のタイミングに加えて、社員にヒアリングを行い、社員が望むタイミングで見直しを行うのも良い方法です。

賃金制度見直しのメリットは総人件費の予測や社員の不満解消など

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賃金制度の見直しにはかなりの時間と手間がかかりますが、メリットも数多くあります。
まず、企業側のメリットとして挙げられるのは、総人件費の予測が容易になること、労働生産性が向上することです。賃金制度が明確になれば、年齢、部署、成果、勤務年数などによってどのくらいの給与を支払わなければならないのかすぐに算出することができます。もちろん不確定要素はあるものの、人件費として今後どの程度の支出が予想されるかを計算するのが容易になるでしょう。

加えて、残業を減らすよう心がけるなど、できる限り支出を抑えるよう努力することで労働生産性が向上し、社員側の労働に対する意識を変えることもできるかもしれません。特にベンチャー企業や創業年数の長い企業では賃金制度を明確にしないまま社員を雇用している会社も多く、社員の不満が溜まることも珍しくありません。賃金制度の見直しによって、こうした不満の解消にも繋がります。

一方社員側は、賃金制度を明確化することで、どうすれば給与が上がるのかが分かるようになります。これによりモチベーションが高まり、より一層熱意をもって仕事を行えるようになるでしょう。加えて、全ての社員が同じ基準で賃金を決められていることが分かるため、会社への信頼が高まり、不公平感をなくすことにも繋がります。

賃金制度見直しの手順

賃金制度を見直すためにはいくつかのステップを踏まなければなりません。まずは、現在の賃金制度の問題点を浮き彫りにします。企業側から見た問題点だけでなく、社員側から見た制度の問題点も把握するようにします。社員へのアンケートや各種データのチェックによってどこを改善すべきかを見極められるでしょう。

次に、自社に合った賃金制度を選択します。賃金制度の見直しといっても、賞与だけ見直す、年俸制にする、基本給を一律上げるなど様々な選択肢が考えられます。他社の事例を参考にするのは良いことですが、他社の制度をコピーしても自社に合うわけではありません。細かい点までよく考慮したうえで、どんな方法がベストなのかを決定することが重要です。就業規則や雇用契約書などの変更を行い、予告期間・移行期間を設けた上で見直しを決行するようにします。

賃金制度見直しは慎重に

賃金制度の見直しは、タイミングを計って上手に行うことで、企業側にも社員側にも良い結果をもたらします。企業側は人件費を把握しやすくなり、社員側は仕事へのモチベーションを高めることができるのです。しかし、賃金制度の見直しは慎重に行う必要があります。給与が上がる社員もいれば、下がる社員もいるため、いきなり大幅な改革をすると反発されることもあるでしょう。社員側の意見も十分に取り入れた賃金制度の見直しを行うことで、会社全体の利益を追求することができるのです。

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