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レジリエンスとは?ストレスと向き合って折れない心と強い組織を作る!

レジリエンスとは?ストレスと向き合って折れない心と強い組織を作る!

組織力アップやメンタルヘルス対策において、『レジリエンス』という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。ストレス社会ともいわれる現代では、すべてのビジネスパーソンや組織に求められる力で、多くの企業で積極的に取り入れる動きがみられます。

今回は、経営者や人事部向けに、レジリエンスの概念と重要性、レジリエンスの高め方について解説します。レジリエンスを正確に把握して、打たれ強い精神力を持った労働者の育成や強固な組織づくりに活かしてください。

レジリエンスとは?

物理学で生まれ、心理学でも使われてきたレジリエンスは、近年、経営学・組織論・社会システム論など、広く用いられるようになりました。まずは、レジリエンスがどのようなものなのかを掘り下げてみていきましょう。

レジリエンスの意味

ビジネス分野で使用される『レジリエンス(resilience)』とは、「個人・組織が持つ、環境の変化や困難、失敗や責任といったストレスに適応して乗り越える力・生き延びる力」を指します。抽象的な概念ですが、英語のresilienceが回復力・復元力・弾力性などと訳されることから、「精神的な回復力」「自然治癒力」「打たれ強さ」などと理解すると分かりやすいでしょう。

レジリエンスを身につけることで、ストレスがかかっても心身の健康を保ちつつ、個人や企業の成長・強固な組織づくりにつなげることができます。

ストレス耐性との違い

レジリエンスを理解するうえでよく比較されるのが、『ストレス耐性』です。ストレス耐性とは、「精神的・心理的・肉体的に受けるストレスに耐えられる程度」を指します。一方、先述の通り、レジリエンスはストレスから回復する力です。

ストレス耐性がないと、レジリエンスを発揮することはできません。ストレス耐性はレジリエンスを構成する要素の1つと考えましょう。

メンタルヘルスとの違い

レジリエンスは、『メンタルヘルス』とも混同されがちです。メンタルヘルスとは、「精神的なストレス・疲労・悩みを緩和するためのサポート、または心の健康状態」を指します。おもに、精神疾患を含むメンタルヘルス不調の予防や治療、回復において使用されます。

メンタルヘルスは、他者が当人に対して行う、精神的な問題の軽減・サポートと考えましょう。一方、レジリエンスは、当人のストレスへの対応力や回復力を表します。メンタルヘルスはレジリエンスを内包すると捉えると良いでしょう。

レジリエンスが求められている背景

レジリエンスが注目され始めた背景には、労働環境の変化と働き方改革の存在があります。多様な働き方が認められるようになった一方で、労働者を取り巻く環境は複雑化し、非正規雇用も増加しました。さらに、経済のグローバル化や景気の低迷、ハラスメントの表面化から、不安定な社会になっているといえるでしょう。

「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」によると、「仕事や職業生活に関して強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者」の割合は58%でした。全体的に高い割合ですが、とくに30~49歳と組織のなかでも中間層の労働者に強いストレスがかかっているようです。ストレス内容としては「仕事の質・量」が最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」と続きます。

仕事に対してストレスを抱える人が過半数を超える現代では、レジリエンスを高めて、さまざまなストレスとうまく付き合っていく力が求められているのです。

レジリエンスがある人の特徴

レジリエンスが個人や企業の成長・強固な組織づくりを可能にすることを先述しましたが、どのように効果へとつながるのかイメージしにくい人もいるでしょう。そこで、「レジリエンスがある人の特徴」と「労働者のレジリエンスを高めることによるビジネスへの効果」について確認します。

レジリエンスがある人の特徴想定されるビジネスへの効果
・柔軟な思考力がある
・良い意味で楽観的な考えができる
・新しいアイデアやシステムの創造
・リソースの有効活用
・ネガティブな事象への臨機応変な対応
・感情を自分でコントロールできる
・自尊感情・自己肯定感が養われている
・安定したパフォーマンスの発揮
・安定した人材確保
・信頼関係のある健全な職場環境の構築
・情報共有・意見交換の活発化
・自分や組織の弱みと強みを理解している・リスクの特定
・リスクマネジメント
・組織力のアップ
・強みの効率的な活用
・失敗を成長の糧にできる・能力やパフォーマンスの向上
・ノウハウの蓄積
・組織全体の生産性向上
・諦めずに挑戦し続けられる・周囲への刺激
・主体的な包括的問題解決
・高い目標の達成

レジリエンスは個人だけでなく組織全体に好影響をもたらします。さらに、レジリエンスが高い人材が多い組織では、相乗効果も起きやすく成果につながりやすい傾向が。労働者・組織のレジリエンスを高めることは、企業の成長や業績アップにつながる重要な要素といえるでしょう。

レジリエンスが必要とされる人

ビジネスパーソンであれば、誰でもレジリエンスが求められます。しかし、組織にはこれまでの人生ですでにレジリエンスが鍛えられている人も、レジリエンスが低い人・これからトレーニングが必要とされる人もいます。

ここでは、組織内でとくにどのような人にレジリエンスを高める働きかけが必要なのか、特徴をみていきましょう。

結果に一喜一憂する人

目の前のことに一喜一憂してしまう人は、周囲の環境や結果に振り回されやすく、安定した精神状態で働くことができません。とくに失敗したり叱責を受けたりした際に、ネガティブな結果につながりやすい傾向があります。

<結果に一喜一憂してしまう人にありがちな問題点>

  • 激しく落ち込んでしまい、立ち直れない
  • 失敗や周囲の視線が怖く、意見を言えない・挑戦できない
  • 仕事に集中できない
  • 問題の本質を見抜けない
  • メンタルヘルス不調に陥る

失敗は、成功より学ぶことのほうが多いといわれるほど有益なもの。何かある度に一喜一憂してしまう人には、レジリエンスを高めて「心の持ちよう」というマインドを持ってもらう必要があるといえるでしょう。

ストレスを溜めやすい人

ストレスを溜めやすい人とは、ストレスと上手に付き合うことができない人です。ストレスを感じやすい思考・行動パターンを持っており、それをうまく発散することができません。そのため、自身のストレスが原因で、周囲へストレスを与える存在になることも。

<ストレスを溜めやすい人の周りで起こり得るトラブル>

  • 業務効率の低下
  • ミスの発生
  • ハラスメント行為
  • 周囲に対しての不寛容
  • 人間関係や職場環境の悪化
  • 過労
  • メンタルヘルス不調

ストレスを溜めやすい人は、完璧主義で自分にも他者にも厳しい傾向があります。さらに、感情や意思表示を我慢しがちで、他者に協力を求められないというケースも。レジリエンスを高めることで、当人の心の健康を保ち、健全で生産的な組織運営につなげることができるでしょう。

変化が激しい業界の人

多様化が進む現代では、労働環境も顧客ニーズも速い速度で変化を続けており、従来の体制では優秀な人材や消費者の獲得が難しくなっています。そこで、高いレジリエンスを持つことで、新しい価値観を受け入れられ、急速な変化にも対応できるようになります。

時代の変化に合わせて組織改革や人事異動が必要な企業や、トレンドや顧客ニーズが毎年変わる業界にいる人は、レジリエンスを高めておくと効果的です。

管理者や管理者候補の人

管理者・管理者候補など組織のリーダーとなる人には、より多くの課題や高い課題が与えられます。プレッシャーや業務量によるストレスも大きくなるため、レジリエンスを高めて自身を守る能力を身につけなければなりません。

さらに、リーダーは個人のレジリエンスだけでなく、部下や組織全体のレジリエンスを鍛える必要があります。組織のリーダーとして、部下や企業の成長・強固な組織づくりと幅広い
課題を解決をするためには、欠かせない能力といえるでしょう。企業としては、管理者や管理者候補に向けてとくにレジリエンスを高めるためのアプローチが求められます。

レジリエンスを高めるためには…

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それでは、個人や企業のレジリエンスはどのように高めれば良いのでしょうか。最後は、レジリエンスを鍛える基本ステップと、鍛えるときのポイントをまとめて解説します。

ストレスや困難のある状況下では、人はだれしも落ち込んだり、やる気が低下したりとネガティブな状態になります。レジリエンスを高めれば、ストレスの発生から立ち直りまで時間をぐっと縮めることが可能です。

ステップ①底打ち

レジリエンスを高めるに当たっては、ネガティブな感情をストップさせる「底打ち」をいかに早めるかがポイントとなります。ネガティブな感情にあるとき、不安な気持ちやマイナス思考は日常生活全体に波及。仕事もプライベートも悪い方向に向かってしまう悪循環に陥ることがあるため、注意が必要です。

底打ちの鍛え方1.気晴らし・気分転換

そこでネガティブ思考の悪循環からできるだけ早く脱却するために、「気晴らし」によるストレスの発散が重要です。気晴らしには「運動」「音楽」「呼吸(ヨガ・散歩など)」「筆記(日記・手紙など)」が効果的であることが科学的に確認されています。なお、肉体的な健康や感情整理のために、良質な睡眠も欠かさず取りましょう。

底打ちの鍛え方2.感情のラべリング&自分の思考癖への反論

まず、ストレスを受けたときのマイナスの感情をラベリング(言葉に起こし)します。言葉にすることで、ストレスに対して何を感じたのかを明確にできます。さらに、ラベリングを参考に、なぜその感情にいたったのか、自身の思考プロセスを見直しましょう。現在のマイナス思考に反論することで、次の「立ち直り」につなげることができます。

ステップ②立ち直り

マイナスな感情を自分で断ち切れるようになったら、前向きな感情・行動に切り替える「立ち直り」を鍛えます。立ち直りは、レジリエンスの本質である「回復」の段階です。

立ち直りの鍛え方1.小さな目標の達成

レジリエンスを高めるためには、自尊感情や自己肯定感が欠かせません。そして自尊感情や自己肯定感は、成功体験を実際に経験することで養われます。成功体験を多く積み重ねられるよう、達成しやすい小さな目標を設定しましょう。

立ち直りの鍛え方2.過去の成功体験の書き起こし

成功体験の積み重ねとして、過去の成功体験を書き起こすことも効果的です。自尊感情や自己肯定感を高めるために、できるだけ多くの成功体験を書き出すことがポイント。「笑顔を褒められた」「ありがとうと言われた」など些細なことで構いません。

立ち直りの鍛え方3.周囲に感謝を伝える

ネガティブな感情の悪循環を繰り返さないためには、自分のなかにポジティブな感情を持つことが重要です。周囲に日ごろの感謝を伝えることは、簡単にポジティブ感情を持てる手段の1つです。日々の生活のなかにある幸せを感じましょう。

レジリエンスについての書籍を活用するのがおすすめ

レジリエンスとストレスは長く心理学で研究されてきました。そのため、世界中でレジリエンスに関する書籍が出版されています。レジリエンスを深く理解し、底打ちや立ち直りの詳しい方法を習得するためには、書籍の活用もおすすめです。心理学の知識がなくても理解できる入門書や漫画もあるため、何冊かピックアップして個々に合う書籍を選ぶのが良いでしょう。

企業ではレジリエンス研修を活用するのも有

組織的なレジリエンスを高めるためには、企業向けのレジリエンス研修の活用も検討しましょう。新入社員向け・個人向け・リーダー向けなど対象者に合わせた研修や、企業規模や業界に合わせた研修が用意されています。企業に求められているメンタルヘルス対策の一環として、取り入れるのがおすすめです。

まずは心理的な安全性の高い職場づくりが重要!

レジリエンスはすべてのビジネスパーソンに求められる能力ですが、すべての労働者のレジリエンスを一気に高めることはできません。そのため、まずはレジリエンスの高めやすい心理的安全性が高い職場づくりから始めましょう。心理的安全性とは、「周囲から批判されるかもしれないという不安を感じず、安心して自身の意見を発信できる状態」を指します。

<心理的安全性が高い環境の特徴>

  • 上下関係を気にせず自由に発信や指摘ができる
  • 困ったときや失敗したときにみんなで助け合える
  • 他者を非難しない
  • 情報共有や意見交換が活発に行われている
  • 指摘やアドバイスを素直に受け入れられる
  • 失敗を隠さず報告できる

…など
心理的安全性が高い職場は「働きやすい」という大きな特徴があり、優秀な人材の確保やモチベーションアップにも効果的です。企業として、まずは働く環境を整備して、組織的なレジリエンスを鍛えましょう。

レジリエンスを高めて個人も組織も強化!

今回は、経営者や人事部担当者が知っておきたい『レジリエンス』について紹介しました。レジリエンスは現代のビジネスパーソン全員に求められる力です。労働者のレジリエンスを高めることで、企業の組織力もアップさせることができます。心理的安全性の高い環境づくりやレジリエンス研修などできるところから始めていきましょう。

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