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ウーマノミクスの推進方法と支援助成金の活用

ウーマノミクスの推進方法と支援助成金の活用

日本の経済成長を牽引するカギになるといわれる「ウーマノミクス」。女性の力の活用に多くの企業が取り組んでいる一方、なかなか女性の力を上手に活かせない企業もあります。その違いはどこにあるのでしょうか。今回は女性活躍に力を入れる企業を参考に、その違いについて考察していきます。また、取り組みの中で申請できる助成金も紹介しています。

女性の力を活用することで組織にもたらされる3つのメリット

「ウーマノミクス」とは「women」と「economy」を合わせた造語で、ゴールドマンサックスの日本株チーフストラテジストであるキャシー松井氏によって1999年に提唱された概念です。「ウーマノミクス」は″女性の力を活用することによる経済の活性化″や″女性が牽引する経済の在り方″そのものを意味しており、2013年に安倍政権が「アベノミクス」三本の矢の成長戦略のひとつとして「女性が輝く日本!」を打ち出したことから再び脚光を浴びるようになりました。

それでは「ウーマノミクス」は、組織にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

第一に、多様な市場ニーズへの対応が挙げられます。女性社員が増えることで、女性ならではの視点からニーズの掘り起こし、商品開発や販売戦略を進めることできます。女性の購買力は年々伸びてきており、男性よりも消費性向が高いため、女性向けの商品開発は今後より一層重要度が高まるものと思われます。

第二に、リスク管理や変化への対応能力の向上が見込めます。英国リーズ大学の研究によると、「女性役員を一人以上登用している企業はそうでない企業よりも破綻確率を20%減らせる」効果があるとされ、企業のレジリエンス強化に貢献します。

第三にSRI(社会的責任投資)の観点からも企業にメリットをもたらします。ダイバーシティ・マネジメントは主に欧州で投資を行う際の評価項目として確立しつつあり、女性の登用はその試金石だといわれています。

女性が活躍するためには職場や家庭における意識改革が重要

女性が企業で活躍するためには、具体的にどのような取り組みが必要となるのでしょうか。ひとつ例を見てみましょう。厚生労働省は女性の能力を発揮させるための積極的な施策や仕事と育児・介護との両立を支援する施策を行っている模範的な企業に、「均等・両立推進企業表彰」を行っています。

女性の力を積極的に活かす「均等推進企業部門」で平成29年に表彰されたのは竹中工務店。同社は女性社員の増加に伴い、女性活躍のための専任組織を設け、全国の支店にダイバーシティ担当者を配置するなど全社的な取り組みを行っています。

アクションを起こす際には組織のトップがメッセージを発して改革を鼓舞し、「採用に数値目標を掲げて女性従業員を積極的に紹介」「女性管理職の職域拡大」「全従業員にダイバーシティ講座を受講させる」「育成担当長へのダイバーシティ研修」「女性が働きやすい作業所の環境整備マニュアルの作成」など、人事から現場マニュアルに至るまで、トップの明確な方針のもと、幅広い領域で全社的な意識改革を実行、管理職や技術職の男女比率の改善など、具体的な成果に結びつけています。

一方、仕事と育児・介護の両立を支援する「ファミリー・フレンドリー部門」に選ばれたのは伊藤忠商事や小田急電鉄など4社。「男性を含めた育休取得の促進」「朝型勤務の導入」「フレックス・タイム制の導入」「勤務時間短縮措置」「保育資金の補助」など、働き方の多様性を促進する施策を打ち出し、仕事と育児・介護の両立推進に成功しています。

以上の企業の取り組みから、女性が活躍する企業風土を醸成するためのヒントを発見できます。

女性の雇用率が低い理由で一般的なのは、子育て仕事の両立ができないことです。保育所の不足や欧米と比べると在宅勤務が一般的ではないことなど、女性の復職を妨げる障害を克服できていません。長時間労働もこうした傾向に拍車をかけており、働き方改革によって是正が図られていますが、残業が常態化している企業や業界も数多く存在しています。そして、職場のみでなく家庭での家事の分担が不平等なことも女性の活躍を妨げる要因となっています。女性活躍の環境を整えるためには、職場での改革と合わせて、家庭での改革も行う必要があるのです。

両部門で表彰された企業は、こうした課題を解決するために、企業トップの明確な方針のもと、社内の意識・行動改革を具体的な形で実行しています。「ウーマノミクス」を上手く活用できている企業は、竹中工務店のように、「経営者のコミットメント」「女性活躍の専任組織」「ダイバーシティ教育等研修制度の充実」「管理職の理解促進」「マニュアル化」などに取り組んで意識改革に成功し、ファミリー・フレンドリー部門の4社のように、働き方の多様性を認めて、男性にも育児参画を促すケースが多く見られます。

一方、女性の登用に失敗している企業は、自社の現状把握をできておらず、全社的な取り組みができていない場合もありますが、数値目標を重視するあまり、現状を疎かにしているという側面もあります。現状把握しないままに数値目標を達成しようとすると、能力不足の社員の昇進によって不公平感などが生じ、女性登用の機運を損なうことになりかねません。

では、どのように女性活躍の推進に取り組んでいけばよいのでしょうか。ひとつの方法として挙げられるのは、「ロールモデルを見つけること」です。自社の個別の課題に応じて、先進的な取り組みをしている企業の見習って取り組みを強化していくことがひとつの解になります。ただ、その前提として、上記の企業のように意識改革を進めることができているか否かが重要です。

女性活躍推進法施行!女性の活躍を国も助成金で後押し

以上のような企業の取り組みを国も後押ししています。平成27年に女性活躍推進法が施行され、従業員数301人以上の企業や自治体は報告書の提出が義務付けられました。

また、厚生労働省では、「両立支援助成金」制度を設け、女性活躍推進法に基づく女性活用に関する取り組みを達成した企業に助成金を支給しています。申請のためには、女性活躍に関する自社の現状把握を行い、数値目標と行動目標を設定して行動計画を策定します。そして行動計画を達成した場合と数値目標を達成した場合の両方に、助成金が支払われるという仕組みです。こうした助成金の活用も視野に入れて、女性の労働環境を改善し、よりよい企業を目指すことがいま求められているのです。

■出典:「ウーマノミクス5.0」(ゴールドマン・サックス)
https://www.goldmansachs.com/japan/insights/pages/Womenomics5.0.html

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