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人事業務をアウトソーシングするときは

人事業務をアウトソーシングするときは

人的リソースを有効に活用するための手段として有効なアウトソーシング。現在では人事の日常業務をアウトソーシングで賄う企業が増えてきました。企業にとっても従業員にとっても、コアな情報が集中する人事領域。アウトソーシングをするにあたって、どこに注意するべきでしょうか?

人事のアウトソーシングはどこまで普及している?

アウトソーシングは、社内の人的リソースを有効活用でき、業務全体におけるコストを下げる効果が期待できることから、すでに多くの企業で活用されています。少々古いデータですが、2008年2月時点でのアンケート結果を見ると、東証一部上場の日系企業1,729社において、総務部門では59.9%、経営企画部門で46.0%、経理部門でも17.9%の企業が「アウトソーシングを実施している」と回答しています(野村総合研究所「BPOに関する調査 報告書」)。人事部門については50.5%と、約半数の企業が導入しています。

委託業務の内容を見てみると、給与計算のほか福利厚生や社会保険処理といった、労務関連の業務が多くを占めています。その一方で、採用関連の業務もアウトソーシングしているという企業も見受けられます。

アウトソーシングへの期待と結果は?

アウトソーシングを活用する企業は、多くの場合、コストの削減とともに「自社のリソースをコア業務に集中させたい」という期待を持っています。そのため、パワーを必要とするオペレーション業務を外部委託するのですが、そうした期待はほぼ実現されているようで、アウトソーシングによって「期待する結果」と、実際に「得られた効果」は、ほぼイコールとなっています。具体的な削減コストについては「20〜30%程度のコストが削減された」という企業が、全体の4割以上に上っています。

このように、満足できる結果を生み出す人事業務のアウトソーシングですが、オペレーティングのみにとどまらず、採用戦略や人材マネジメントまでもカバーするケースも見られます。

採用ソリューションを活用する利点

アウトソーサー(アウトソーシングの委託企業)の中には、企業の人事課題を中長期的な視点から解決する、採用ソリューションを提供しているところもあります。彼らは、人材と採用にかけては、多くのトレーニングと経験を積んだ専門家です。ですから、採用戦略についてのコンサルティングを依頼すれば、事業計画に沿った人事戦略を自社の担当者とともに練ることができるでしょう。これは自社にとって、大きな力となるはずです。

企業は組織であり、組織は個人の集合体です。となれば、そこに集まる人材の質は、そのまま組織の質になります。さらに、組織が今後どのように事業を広げ、発展していくかという展開を描くとき、「いつ、どこに、どのような人材が必要か」という視点は欠かすことができません。

そうした中長期的なプランを、あらゆる採用手法を熟知した採用コンサルタントとともに構築し、実践することができれば、多くの企業を慢性的に苦しめている「人材問題」を、一気に解決することもできるでしょう。

人事をアウトソーシングする際の注意点

さて、かなり活用のしがいがありそうな人事のアウトソーシングですが、実施にあたっては、注意すべき点があります。最も重要なのは、「どこからどこまでの業務をアウトソーシングしたいのか」「どのような成果がほしいのか」ということを明確にしておくことです。「人事業務をアウトソースに振り分けたい」といっても、その具体的な内容が曖昧なままでは、依頼のしようがありません。給与計算や社会保険事務等のオペレーションを委託するだけならまだしも、各種人事制度や採用に関する課題まで委託したいとなれば、なおのことです。

「自社では今、こういう課題があり、このようなリスクがある。それをこうした形で解決したいので、ここからここまでの業務をアウトソーシングしたい」。このような明確な依頼であれば、アウトソーサーはそれに応じた提案をしてくれるでしょう。また、多くの企業の人事部門を見てきた経験から、認識できていないリスクや埋もれている課題の指摘をしてくれる可能性もありますし、それも含めて総合的な解決策を提案してくれるはずです。

人事アウトソーシングのデメリットは?

人事アウトソーシングには、人的リソースの有効活用やコストの削減といったメリットがある一方で、デメリットも存在します。

1. ノウハウが蓄積できない
人事業務は専門性が高く、そこには多くのノウハウが存在します。ですが、アウトソーシングしてしまうと、そうしたノウハウの蓄積ができなくなってしまいます。
そのため、定期的に業務内容についてすり合わせを行ったり、業務仕様書を作ったりしておく必要があるでしょう。

2. コストが大きくなることがある
アウトソーシングは基本的に、テンプレートに沿った業務を行います。そのため、イレギュラーな対応が必要な場合、追加費用が発生することがあり、結果としてコストが高くつくことがあるのです。
こうしたことを防ぐためにも、委託業務の内容については明確にしておくことが重要です。

3. 個人情報が漏れる不安がある
情報漏洩は情報化社会において大きな問題です。ですが、過去に起きた漏洩事件は、社内からの流出がほとんどです。個人情報を外部に持ち出すからといって、それ自体が危険だとはいえません。
数多くのアウトソーサーが乱立している中で、情報管理におけるリテラシーや設備、情報流出対策の程度には幅がありますから、認証資格の有無なども含め、しっかり確認しておくようにしましょう。

このように、人事のアウトソーシングにはデメリットもありますが、それはメリットを覆すほど大きなものではありません。自社リソースの有効活用とコスト削減、さらに人的課題の解決のために、アウトソーシングを上手に活用してください。

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