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どうする?「ゆとり世代」「さとり世代」の新入社員教育

どうする?「ゆとり世代」「さとり世代」の新入社員教育

ゆとり教育を受けて育ったいわゆる「ゆとり世代」のうち、独特の嗜好や価値観を持った層を指して「さとり世代」と呼ぶことがあります。1990年代生まれのこの層が、新卒として企業に就職する時期を迎えましたが、少々厄介な問題が企業側に起こっているようです。

近年の新入社員に見られる傾向

ここ数年のことですが、新入社員の教育について頭を悩ます人事担当が増えてきました。それは、近年の新人たちが持つ資質に要因があるようです。社員教育を請け負う研修会社でも同様の変化を感じ取っているらしく、「最近の新人は以前のような反応に乏しく、貪欲さや熱さを感じない」という言葉が漏れ聞こえてきます。
「ゆとり世代」「さとり世代」といった言葉でひとくくりにしてしまうのが良いかどうかはわかりませんが、こうした言葉で形容される層には、確かに独特の価値観や判断基準があります。
地位やお金に対する執着が弱く、高価な車やブランド品、海外旅行などにもあまり興味を示しません。恋愛にも淡泊で、いわゆる「草食系」が多いようです。
積極的に外に出て行く意識は薄く、そのため地元志向になりがちです。ただし、情報源としてネットをうまく活用しますから、知識は豊富です。一方で、情報が豊富であるためにさまざまなことについて結論付けることも早く、一度自分なりの結論が出てしまうと、それ以上に深く追求しようとはしません。
重視するのは何ごとも結果であって、そこに至るプロセスに興味を持つことはあまりないようです。
醒めているといえば確かにそのとおりですが、そうした性質のために、これまでの新人教育がうまく機能しないという問題が起こっているのです。

ゆとり・さとりが生まれた背景にあるもの

彼らに対して否定的な見方をする大人たちは、例によって「最近の若い者は…」と言うことでしょう。ですが、彼らがこのような傾向を持つに至った背景には、それなりの理由があると考えられます。
さとり世代が幼少期を過ごした時代は、世の中はすでに少子化に向かっていました。子供の絶対数が減っていく中、学習塾や習い事など、子供を対象とする商品やサービスを扱う業界は、軒並み競争が激化していきました。その結果、彼らは過剰品質と過剰サービスに囲まれて育つことになり、周囲から「してもらう」ことに慣れ切って成長していきます。
また、情報通信インフラが整備され、ソフト・ハード両面にわたってツールが用意された時代に青春期を過ごした彼らは、物事を深く考える必要がありません。あらゆる情報はネットに落ちています。さらに、SNSなどにより、同質の仲間たちとのコミュニケーションが多くなっていますから、異世代や自分と異なる価値観を持つ人と接することが少なくなっています。
そんな彼らが新人として企業に入社すると「自律的に行動できない」「自分で考えることをしない」「コミュニケーション能力に偏りが見られる」などの評価を受けることになってしまうのです。

彼らのうちに眠る気力を引き出すためには?

では、このような新入社員に対して、どのような育成方法を採ればいいのでしょうか?目的は、彼らの内側からやる気を引き出して、自律的に考え、行動できるようにすることです。
彼らは出世や高額のサラリーにはあまり興味を示しません。むしろ、ほどほどにがんばり、ほどほどの給料をもらえれば良いという考え方です。そのため、昇給やポストといった外的要因でモチベーションを高めることができません。内的要因によってやる気を引き出す必要があります。
その方法はひとつではなく、また、複数の教育手法を組み合わせる必要もありますが、まずは彼らに「達成感を自覚させる」ということが一番に挙げられます。
すべてにおいて「ほどほど」を良しとしてきた彼らは、「徹底的に追求する、やれるすべてのことをやり切る」という作業を、経験したことがないかもしれません。ですが実社会では、新人の彼らが「ほどほどにがんばった」程度では、成果など望むべくもありません。
ですから、彼らが全力を尽くしてようやくやり切れるほどの質と量を持った仕事を与え、その過程では常に支援し、やり切るまで見守ることです。そして無事にやり切ったなら、十分に承認を与えるのです。それによって彼らは「やり切った達成感」を知り、同時に自分に求められている能力のレベルを理解します。そして、その経験を次の機会に活かすことで、自分自身の成長につなげられるのです。

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OJTで押さえておきたい4つのポイント

実際の業務の中でトレーニングを行うOJTの場合はどうでしょう?日本産業能率大学 総合研究所では、近年の新入社員に対する関わり方のポイントとして、以下の4つを挙げています。

<新入社員との関わり方>
・“仲間”として迎え入れ、期待を伝える
・やってみせる、実力をみせる
・指示する際には背景や意図を伝え、できたことを具体的に褒める
・叱るときは、相手のためを思って本気で、叱る

まず、承認を与えて疎外感を感じることのないようにし、指導者に十分な実力があることを見せて、「この人についていけば大丈夫」と安心させること。指示を出すときには、その指示にどのような意味があるのか、同僚やお客様、さらに自分の成長にとってどれだけ有益かということを常に理解させること。本気で向き合い、その将来を思うからこそ本気で叱るのだという叱り方を心掛けること。
いずれも簡単なことではないかもしれません。ですが、これらのポイントを頭の片隅に置いておけば、それに沿った接し方ができるようになるものです。
若者たちのやる気を引き出し、企業人として育て上げることはなかなか難しく、思うように運ばないことも多々あります。時間もかかるでしょう。ですが、人は「促成栽培」では育ちません。ある程度の腹を据えて彼らと向き合うことが、最も肝要なのかもしれません。

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