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これからのビジネスの現場に欠かせない「コーチング」

これからのビジネスの現場に欠かせない「コーチング」

現場での効率を高め、チームの総合力を上げていくために、コーチングは欠かせない要素のひとつです。ですが、コーチングのやり方を間違ってしまうと、思ったような効果は得られません。適確なコーチングを行うためには、指導する側が正しいコーチングスキルを身に付ける必要がありそうです。

コーチングは単なる教育ではない

コーチングという言葉は知っていても、「手法や考え方まで理解している」という人は意外と少ないようです。コーチングとは、単に業務上のノウハウを教えたり、精神面での啓蒙をしたりというものではありません。能力を伝えるものではなく、むしろ個人の中から能力を引き出し、自発的な行動を促すものなのです。教育というよりは、人材育成の一環ととらえたほうが良いでしょう。

コーチングには大きく分けて「パーソナルコーチング」と「ビジネスコーチング」がありますが、ここでお話しするのは当然ながら後者です。ビジネスコーチングは、組織に属する個人が持っている可能性を探り、その能力を引き出し、最大限に発揮できるように導くことが目的です。

本来は企業の管理的な立場の人間がすべきことではありますが、日本では手法そのものが浸透していません。そのため、外資系や中小企業の経営者層が、専属のコーチを雇って行っていたりする程度しか、実例はないのが実情です。

なぜコーチングが必要なのか

ITやIoTによって、ますます情報化社会へのスピードが加速し、グローバル化はますます進んでいます。半年先や1年先の予測ですら、正確に立てることが難しい状況です。しかし、変化に対応できなければ多大な損失を被ることも想像できますので、企業はどのような変化にも即応できる体制を取っておくべきです。

その対策のひとつとして、組織を構成する個人が能力を高めようとするモチベーションを維持し、最大限の能力を発揮できるようにしておくことが必要です。そのために、一人ひとりの意識を高めて能力を引き出すコーチングが必要なのです。

問いかけて、答えを引き出すコーチングの手法

実は、コーチングには多くの流派があり、トレーニング法はそれぞれ異なります。ですが、根幹となる部分に大きな違いはありません。まず、コーチは対象者(クライアント)に質問をします。その質問に対して、クライアントは自分自身で考え、答えを出します。コーチはクライアントの話をよく聞き、それを受け入れます。この繰り返しを重ねて、クライアントが自分自身の中にある「解答」に気付くまで導いていくのです。

何かを教える「教育」の場合、講師と生徒という上下関係がありますが、コーチングではこうした上下関係はありません。コーチはあくまでも協力者や共同作業者であって、クライアントの話を聞いて受け入れ、承認してほめることがおもな役割です。

一般企業では、マネージャー層がコーチ役になることが多いと思われます。しかし、対象者とのあいだに上下関係があると、コーチ役の上司が考えや結論を押し付けようとしてしまい、対象者である部下が反発を感じてしまうことがあります。これでは、コーチングの成果は上がりません。

コーチングのスキルを身に付けるには

それでは、どのようにして正しいコーチングを導入すれば良いのでしょうか。例えば、人材会社や教育関係の企業などを中心に、コーチングを請け負う会社は多数あります。また、コーチングを行う会社では、コーチを養成するための習得プログラムも用意されています。自社のマネージャーにこうした講座を受けさせ、社内コーチとして活動してもらうのも良いでしょう。きちんと講習を受けたコーチならば、対象者とのあいだに上下関係があったとしても、フラットなコーチングができるはずです。

また、コーチングスキルを身に付けることは、より高レベルのコミュニケーション能力を身に付けることにもなります。コーチングを受けたい、あるいはコーチングスキルを身に付けたいというときは、まずは体験セッションを受けてみると良いでしょう。前項でお話ししたように、コーチングにはいくつかの流派があります。自社、あるいは自分との相性を確かめ、それから選択しても遅くはありません。

コーチングによって、個の力を組織の力へ

「アメとムチ」は、人を動かすときにしばしば使われる手法です。目先の行動を促すには、この方法でも通用するでしょう。ですが、不確実性を増すビジネス環境の中で求められるのは、組織を構成するメンバー一人ひとりが自発的に問題を考え、みずからの意志で解決しようと行動することです。また、その場限りの瞬発力ではなく、持続性が大切なのです。

アメとムチの場合、「この問題をクリアすれば給料が上がるから」「次のポストに近づけるから」といった「外発的動機付け」ですので持続性は期待できませんし、場合によっては反発する人も出てきます。人が自発的に動くためには、「仕事が自分の目標や目的と合致している」「自分がやりたいことに、将来役立つ」という「内発的動機付け」が必要なのです。
コーチングは、そうした個々のモチベーションと能力を引き出し、組織の力へと集約していくために欠かせない要素なのです。

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