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在留資格「高度人材」とは?外国人雇用なら「ポイント制」も要確認!

在留資格「高度人材」とは?外国人雇用なら「ポイント制」も要確認!

高度人材の採用を検討している企業には、「どのような外国人であれば高度人材となるのか」「どう雇用したらいいのか」など、疑問がつきものです。グローバル化が進み、日本企業もさまざまな国や地域から優秀な人材を受け入れ、国際競争力を高めなければなりません。

今回は、「高度人材」と呼ばれる優秀な外国人の採用について、詳しく解説します。日本企業によって高度人材の活用は大きなメリットが多々あるものの、受け入れは簡単ではありません。高度人材について理解を深め、企業力アップにつなげましょう。

高度人材とは?

「高度人材」とは、外国人労働者のなかでも、専門的な技術や知識を有しているとくに優秀な人材を指します。現在、世界中で優秀な人材の確保に向けた競争が激化しており、日本政府も積極的な高度人材の受け入れを進めています。

内閣府は、下記のように高度人材について定義付けを行っています。

“国内の資本・労働とは補完関係にあり,代替することが出来ない良質な人材」であり,「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに,日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し,我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」とされています。”
平成21年5月29日高度人材受入推進会議報告書

高度人材は、学歴・職歴・年収など点数で評価されます。一定のポイント以上を持つ外国人労働者は、「高度専門職」として優遇措置のある在留資格を得ることができます。まずは、高度人材について、詳しく確認しておきましょう。

高度人材の分類

高度専門職の在留資格は、大まかに「高度専門職1号」と「高度専門職2号」に分けられます。高度専門職1号は、活動内容によってさらにイロハの3つに分類されます。

・高度学術研究活動=高度専門職1号(イ)
研究、または研究の指導・教育を行う活動の場合。研究者・大学教授などの職業の外国人材が該当します。

・高度専門・技術活動=高度専門職1号(ロ)
自然科学・人文科学の知識や技術が求められる業務に従事する活動の場合。化学・生物学の研究者や、心理学・社会学の研究者などが該当します。

・高度経営・管理活動=高度専門職1号(ハ)
事業の経営・管理に従事する活動の場合。IT人材や経営者、企業幹部などが該当します。

高度専門職1号と高度専門職2号の違い

高度専門職1号も高度専門職2号も、専門性などに大きな違いがあるわけではありません。高度専門職2号は、高度専門職1号を取得して3年以上在留した外国人にのみ付与される資格です。日本で長く活動してくれる高度専門職2号の高度人材は、高度人材1号よりも出入国在留管理上においてより多くの優遇措置を受けられるようになっています。

高度人材を活用する5つのメリット

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それでは、優秀な人材とはいえ、わざわざ海外の人に在留資格を与えてまで雇用するメリットはあるのでしょうか?ここでは、高度人材を活用するメリットを紹介します。企業にとって、高度人材の活用は企業の成長の起爆剤になる可能性に注目したいところです。

グローバル経営の実現

優秀な外国人人材を雇用することで、日本人にはない価値観の活用や、外国語を要する業務のスムーズな展開、海外企業とのネットワーク構築など、グローバル経営に大きなメリットがあります。

優秀な人材を海外から集める動きは世界中で広がっていますが、現在とくにアジアの企業において受け入れが活発化しています。各国の企業が海外展開を進め、国際競争が激化するなか、日本企業も日本国内の市場だけでなく海外展開を視野に入れなければ生き残りが難しい時代となりました。多様な高度人材を受け入れることで、経営をグローバル化させることができるのです。

外国人ならではの発想の活用

グローバル化するためには、世界で受け入れられる価値観・技術・企業文化を持つことが必要です。日本人だけでは日本の価値観や企業文化からの脱却は難しいものですが、外国人材がいることで各国の習慣や価値観を組織内部に取り入れることができます。

また、勤勉な日本人らしい仕事ぶりは日本では評価されても、海外展開するうえでは障害となることもあります。外国人材を受け入れれば、日本人にはあまり見られない独創的な発想や仕事ぶりによって、日本人の苦手な部分をカバーしつつグローバル化を進めることができるでしょう。

競合他社との差別化が測れる

高度人材を有効に活用し、世界に通じる企業として成長したり、外国人向けサービスが提供できたりすれば、日本国内において競合他社との差別化が測れます。海外で事業を展開していなくても、日本国内にいる在日外国人や外国人観光客を取り込むアプローチができれば、競争優位性を構築できるでしょう。

日本の高度人材の雇用は政府が目標とするよりも低い水準となっています。つまり、競合他社の多くは高度人材を雇用していない、グローバル化に向けた準備が進んでいない可能性があります。そのようななか、高度人材を雇用することは、他社にはない事業の拡大やサービス品質の向上につながるのではないでしょうか。

世界の優秀な人材を確保できる

海外の人材も選択肢に入れば、日本国内では雇用が難しい場合でも、高度人材を活用すれば優秀な人材を確保できる可能性があります。

人手不足が叫ばれるなか、自社にマッチする優秀な人材の確保が難しい状況という企業も多いでしょう。日本国内において、企業の成長に欠かせない労働力はこれからさらに減少していきます。事業を継続・発展させるために、国籍にこだわらない採用活動を始めるメリットは十分にあるといえるのではないでしょうか。

多様性や国際化を促進する

外国人材を雇用すれば、組織に多様性が生まれ、国際化を促進することができます。グローバル化が進むと同時に、人材活用戦略としてダイバーシティ経営も重視されるようになっています。ダイバーシティ経営では、多様な人材を集めて、それぞれが能力を最大限発揮できる機会を提供することで新たな価値を創造、企業の発展につなげる経営を指します。

日本企業では日本人しかいないことが多く、外国の歴史や文化、価値観に触れる機会がないので、多様性が失われやすい傾向があります。語学力や論理的思考、向上心、ハングリー精神などを持つ高度人材が組織に加わることで、企業内のダイバーシティを高め、日本人社員への良い刺激となるでしょう。

高度人材ポイント制とは?

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高度人材の活用を前向きに考えている企業であれば、「高度人材ポイント制」についてしっかりと把握しておきましょう。

高度人材ポイント制は、評価基準に照らし合わせて一定のポイントを得た人材に在留資格が与えられる制度です。高度人材ポイント制は、世界各国で外国人材を受け入れる制度として導入されています。日本の場合、合計ポイントが70点を超えた外国人が優遇措置を受けられます。

ここでは、高度人材を雇用するうえで知っておきたい高度人材ポイント制の仕組みについて詳しくみていきましょう。

「高度人材ポイント制」が導入された目的

日本の高度人材ポイント制は、高度人材の受け入れを促進するために、2012年にスタートしました。さらに優秀な外国人材に日本に来てもらうために、2015年に高度専門職1号と高度専門職2号が創設されました。

日本政府が高度人材ポイント制を導入した背景には、日本企における国際競争力低下が危惧されていることがあります。現在、日本は超高齢化社会となり、労働人口の減少が大きな社会問題となっています。高度人材ポイント制の導入や高度人材の受け入れが進むことで、日本企業の国際競争力の強化、イノベーションの創出、、日本の経済成長などが期待されています。

ポイントの計算方法

日本の場合、学歴・職歴・年収・年齢に加え、高度学術研究活動・高度専門/技術活動・高度経営/管理活動のそれぞれの特性に応じた「ボーナス点」を合計して計算されます。

たとえば、高度学術研究活動の学歴の評価の場合、博士号取得者には30ポイントが加算されます。職歴は長いほど、年齢は低いほどポイントが高くなります。その他、日本語能力試験で一定以上のレベルを有している場合や、法務大臣が告示で定める大学を卒業した人などはボーナスポイントが加えられます。詳細なポイントの条件は、法務省 出入国在留管理庁のポイント計算表を参照してください。

一方、職歴には、アルバイトなどは含めない・実務経験が3年以上など細かな条件もあるので要注意です。高度人材として雇いたい外国人がいる場合は、履歴書を入手することで、ポイント計算表と照らし合わせながらおおよその数字が算出できます。

高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇措置

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先述のとおり、高度専門職1号と高度専門職2号は、優遇措置に違いがあります。高度専門職2号の場合、高度専門職1号の優遇措置に加えて、在留期間が無期限となります。

<高度専門職1号の優遇措置>
・複合的な在留活動の許容
・在留期間の5年の付与

<高度専門職2号の優遇措置>
・在留期間が無期限
・「高度専門職1号」で認められる活動+就労に関する在留資格で認められるすべての活動を許容

<高度専門職1号と高度専門職2号共通の優遇措置>
・永住許可要件の緩和
・配偶者の就労
・一定の条件の下での親の帯同許容
・一定の条件の下での家事使用人の帯同の許容

高度専門職1号と2号と共通の優遇措置を中心に、実際にどのような優遇措置を受けられるのか具体的に確認していきましょう。

複合的な在留活動の許容

基本的に、日本の在留資格を持つ外国人は、許可された在留資格で認められた範囲内の活動しかできません。たとえば、医療従事者の在留資格なら医療業務のみに従事、経営・管理の在留資格なら事業経営や事業の管理に従事、など活動の範囲が限られています。

一方で、高度専門職1号の場合、大学で研究活動しながら、関連する事業を経営するなど、個別の在留資格を取得しなくても複合的な在留活動にまたがった活動が可能になります。

高度専門職2号になると、就労関連の在留資格で認められるほぼすべての活動が許容されることとなります。そのため、高度専門職2号の外国人は、日本国内で転職することが可能です。

在留期間の5年の付与

高度専門職1号が認定されれば、日本に在留できる期間が一律5年付与されます。就労に関連する在留資格は、通常初年度は1年なので非常に優遇されていることがわかります。法律上5年が最長の在留期間ですが、更新することも可能です。

また、高度専門職2号に認定されれば、在留期間は無期限と延長されます。

在留歴に係る永住許可要件の緩和

高度人材として日本に在留している人は、永住許可を申請するための要件が緩和されます。日本の永住許可を得るためには、原則として10年以上在留・5年以上就労する必要がありますが、高度人材であれば下記を満たすことで永住許可の申請ができるようになります。

・70ポイント以上の外国人:日本に在留して活動を3年間継続している
・80ポイント以上の外国人:日本に在留して活動を1年間継続している

「高度専門職2号が取得できれば在留期間が無期限になるのでは?」と疑問に感じる人もいるでしょう。しかし、無期限の在留資格と永住資格は付与される権利が異なります。たとえば、在留資格では就労をしていないと資格が取り消されますが、永住資格では就労の有無は問われません。一方で、後述する親や家事使用人の帯同は、高度専門職の在留資格では許可されていますが、永住資格では許可されていません。

親や家事使用人を帯同したい外国人には高度専門職2号在留資格を、帯同が必要ないという人には永住権が向いているといえるでしょう。

永住許可要件の緩和の詳細は永住許可に関するガイドラインを確認してください。

配偶者の就労

高度人材の配偶者は、日本で就労する際に必要となる要件を満たしていなくても、「教育」「技術・人文知識・国際業務」などに該当する就労が認められています。

一般的な在留資格を持つ外国人の配偶者が、「教育」「技術・人文知識・国際業務」などにあたる活動に従事するためには、学歴・職歴などについて一定の要件を満たして在留資格を取得しなければなりません。

一定の条件の下での親の帯同許容

一部条件はあるものの、高度人材には親を連れて日本に在留することが認められています。現在、就労に関連する在留資格では、原則として親の受け入れは認められていないため、事情によって親と同居したい外国人にとっては嬉しい優遇措置といえます。

<親を帯同させる場合の要件>
・高度人材の年収が800万円以上
・高度人材と親は同居する
・高度人材または、高度人材の配偶者のどちらかの親に限る

一定の条件の下での家事使用人の帯同の許容

日本において、外国人の家事使用人の雇用については、一部の在留資格を持った外国人にしか認められていません。一方で、高度人材は、一定の要件を満たせば家事使用人を帯同することが認められています。

<家事使用人を帯同させる場合の要件>
・高度人材の年収が1,000万円以上
・帯同できるのは1人まで
・家事使用人に月20万円以上の報酬を支払うことを予定している…など
※その他、外国で雇用していた家事使用人を引き続き雇用するか否かで条件が異なる

詳細な条件は、出入国在留管理庁のページに記載されています。

高度人材はどうすれば採用できる?

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それでは、企業力を上げる高度人材はどのように採用すればよいのでしょうか。

・外国人人材紹介サービスの活用
・Web求人での募集
・自社の採用サイトでの募集
・合同就職面接会への参加

高度人材を採用するためには、おもに上記の4つの手段があります。それぞれの特徴について確認しておきましょう。

外国人人材紹介サービスの活用

日本人の人材紹介サービスと同様に、外国人を採用したい企業と日本で働きたい外国人をマッチングするサービスがあります。人材の選定や求人票の作成、応募者との連絡や面接日程調整を代行してくれるので、外国人の採用に不慣れな企業でもスムーズに採用が可能。また、高度専門職ビザの申請業務も依頼できることもあり、手続きが不安な場合でも確実に採用を進めることができるでしょう。

Web求人での募集

外国人人材が日本で就職したいときに利用されるのがWeb求人です。日本で働きたい外国人とのマッチングや面接のセッティングまでフォローしてくれサービスが多くみられます。サイトによって掲載費用や料金体系が異なるため、利用するサービスはよく検討する必要があります。

自社の採用サイトでの募集

自社の採用サイトには、必ず求人情報を掲載しておくようにしましょう。日本ではWeb求人サイトや人材紹介サービスを利用して転職活動する人が多いものの、海外では外国人人材を採用している企業を自分で確認し、応募する人も多いもの。そのため、自社サイトの採用情報しか確認しない外国人材もいます。他の手法で応募を募る場合でも、企業の魅力が感じられる採用サイト・ページを用意しておきたいところです。

合同就職面接会への参加

外国人材採用に向けたイベントも数多く開催されています。日本にいる外国人材であれば実際に会うケースもありますが、現在は海外在住の人も多いため、オンラインでの説明会や合同面接会も多く開催されています。実際に応募者と直接コミュニケーションが取れるため、相手の反応を確認しつつ採用活動を進めることができます。

経済産業省所管の独立行政法 日本貿易振興機構(ジェトロ)では、外国人材採用に向けたイベントを検索できるため活用がおすすめです。

高度人材のビザ申請の方法と流れ

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高度人材を雇用する企業は、外国人材が確実に日本で働けるように高度専門職の資格が取得できるようビザの申請や申請のフォローに注力する必要があります。

高度専門職の資格を申請する方法は、おもに「企業または本人が申請する」「行政書士や代行サービスに依頼する」の2種類があります。ビザ申請の流れと合わせて、詳細を確認しましょう。

方法①企業または本人が申請する

企業または雇用予定の外国人本人が申請する場合、自分たちで手続きを行うことからコストを最小限に抑えてビザの申請をすることができます。申請手順自体は複雑なものではないため、自分たちで申請することは可能です。一方で、書類に不備があったり、ポイントが足りなかったりと不許可になるケースも見受けられます。申請は何度も上げ直すことができますが、審査の目が厳しくなりやすい点に留意が必要です。

方法②行政書士や代行サービスに依頼する

行政書士やビザ申請の代行サービスに依頼する方法では、ビザ申請のプロに手続きや書類作成を代行してもらえるため、申請承諾率が非常に高い点がメリットです。複数人を同時に雇用する場合、準備にかかる工数や負担が大きくなりますが、外部に委託してしまえば社内リソースが圧迫されることはありません。申請を何度も上げ直すと、企業側も外国人側もストレスの原因となるため、ビザ申請に慣れていない場合や複数人を一度に雇用する際などは委託を検討するとよいでしょう。

ステップ①地方出入国在留管理局の窓口で申請する

海外にいる外国人を呼び寄せる場合はビザ(査証)申請の前に、まず在留資格の申請をする必要があります。申請のときは、地方出入国在留管理局の窓口でイロハいずれかの高度専門職1号の在留資格認定証明書交付申請を行います。外国人が国外にいる場合は、雇用予定の企業が申請をすることができます。

申請の際は下記の書類を提出して高度人材の認定を申請してください。

<必要書類>
・在留資格認定証明書交付申請
・ポイント計算表
・ポイントを立証する資料

ちなみに、日本に既に滞在している外国人の場合は、在留資格変更許可申請を行う必要があります。審査や手続きに関して疑問や不明点がある場合は、入出国在留管理庁または地方出入国在留管理局に相談しましょう。

ステップ②出入国在留管理庁で審査が実施される

提出された書類を基に、入管法第7条第1項第2号にある「上陸条件への適合性」の審査が行われます。このときに、外国人材のポイントが計算され、70ポイント以上を有しているかがチェックされます。

高度人材の条件をクリアしない場合でも、その他の在留資格の上陸条件を満たしている場合は、希望次第で高度専門職以外の在留資格で在留資格認定証明書を交付してもらうことが可能です。

ステップ③審査に通れば在留資格認定証明書が交付される

審査に通れば、「在留資格認定証明書」が交付され、申請者や代理で申請した企業に届きます。一方で、在留資格がないと認められれば在留資格認定証明書は交付されません。

在留資格認定証明書が交付されたら、外国人が自国の日本大使館でビザの申請を行います。申請をしないと、パスポートの入国許可書が貼られないので、日本に入国したときに在留カードの受け取り・上陸審査手続きがスムーズに進まない点に要注意。

採用後は、雇用した外国人について氏名や在留資格についてハローワークに届けなければならない義務があります。必ず法令を遵守して、届出や雇用管理を行ってください。

ポイントを抑えて高度人材採用を成功させよう

高度人材の採用活動は、日本人の採用活動よりも手間も時間もお金もかかります。ミスマッチが起これば、せっかく海外から呼び寄せた優秀な人材の早期離職や無駄なコストが増大する可能性があります。

高度人材の採用を行うときは、採用目的や自社で携わる業務内容、期待する目標など具体的な採用戦略を練ることが重要です。高度人材が定着している企業例や、採用手法などをよく調査し、受け入れ体制を整えてから実際に募集を始めましょう。初めて高度人材を受け入れる企業は人材派遣会社や行政書士などに相談しながら進めるのがおすすめです。

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