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組織人事コンサルタントとは?役割・仕事内容・求められるスキルと年収、転職のポイントを解説

組織人事コンサルタントとは?役割・仕事内容・求められるスキルと年収、転職のポイントを解説

組織人事コンサルとは

組織人事コンサルタントは、「人材」「組織」領域に特化し、企業が抱える経営課題のうち主に人的資本や組織戦略に関する問題の解決を支援する専門家です。採用・育成・制度設計・組織改革といった人事分野全般に携わり、企業の成長を支える重要な役割を果たします。本セクションでは、その役割や重要性を解説します。

企業における具体的な役割と重要性

経営環境の変化が激しい現代において、人材や組織の課題は企業の成長を左右する重要なテーマとなっています。組織人事コンサルタントは、この課題に対して以下の3つの観点から解決策を提供しています。

人事領域のDX推進

属人的な人事管理から脱却し、テクノロジーを活用したデータドリブンな人材マネジメントへと進化する中で、TMS(タレントマネジメントシステム)やピープルアナリティクスの導入・活用を通じた高度化・効率化を支援します。

人的資本経営の実行支援

ESGやサステナビリティ経営の観点から人的資本の戦略的な可視化と投資が求められる中、ISO30414に基づく開示対応や人材戦略設計を支援します。

組織開発・人材育成のパートナー

カルチャー浸透、リーダー育成、評価制度の見直しといった「人と組織」の変革を、ワークショップ設計やファシリテーション等の手法を駆使しながら支援します。

組織人事コンサルは、単なる業務代行を超えて、経営に深く関与する戦略的パートナーとしての役割を担っているのです。

他業種との違い

組織人事コンサルは、戦略系・IT系・業務系など他のコンサル領域と比較して、以下の点で明確な違いがあります。

・「人」や「組織」が中心テーマ
戦略系が市場・競合・中長期計画、IT系がシステム導入やデジタル変革を主領域とするのに対し、組織人事コンサルは人材配置・育成・組織設計など、感情や価値観にも踏み込んだ支援が求められます。

・伴走型支援が主流
成果物納品型が多い他領域に対し、変革プロセスの継続的支援を行う伴走型支援が主流です。顧客と長期的な信頼関係を構築する傾向があります。

・多様なクライアント層
大企業から中小企業・スタートアップ・外資系まで対応範囲が広く、ダイバーシティや人的資本開示など全業種共通の課題に対応します。

組織人事コンサルの仕事内容

組織人事コンサルタントは、企業の「人事戦略」や「組織開発」に関する課題を明確にし、その解決策を提案・実行する役割を担います。代表的な業務は以下の通りです。

・人事制度の設計・見直し
報酬制度・評価制度・等級制度などの設計や見直しを通じて、人事制度の全体最適化を支援します。

・タレントマネジメント支援
ハイパフォーマーの発掘や後継者育成、戦略的人材配置など、タレントマネジメントの仕組み構築を支援します。

・組織変革・カルチャー醸成支援
組織文化の浸透や変革を目的としたワークショップや対話施策を設計・実行し、従業員の納得感を伴う変革を推進します。

・人材育成・リーダー開発
次世代リーダーや管理職層の育成を目的としたアセスメントや研修プログラム、コーチングなどを設計・運用します。

・人的資本開示・ESG対応支援
人的資本の可視化や開示義務への対応として、社内データの整理や外部向けレポート作成支援を行います。

制度や戦略の枠組みにとどまらず、「人の行動や感情」にも深く関与する複雑性と人間理解が求められる職種です。

人事組織コンサル 会議風景

組織人事コンサルのやりがい

組織人事コンサルタントとして働く中で得られるやりがいは、「人の可能性を引き出すこと」や「組織の変革に寄与すること」など、多岐にわたります。この仕事では、そうした意義や魅力を感じられる場面が多くあります。

まず、設計した制度や支援したプロジェクトを通じて、社員の意識や行動が変化する瞬間に立ち会えることです。人々が新しい視点を得て成長していく姿を間近で見ることができるのは、仕事の意義を強く実感する瞬間です。

また、経営層との対話を通じて、自身の視座が高まることも大きなやりがいの一つです。経営陣と議論を重ねる中で、ビジネス全体を俯瞰する視点を養うことができるだけでなく、戦略的な思考力を磨く機会にも恵まれます。こうした経験は、単なる業務遂行以上の知的成長をもたらしてくれます。

さらに、人や組織の課題は多様かつ複雑であり、正解が一つではないことがほとんどです。そのため、状況に応じた創造的なアプローチを模索し、挑戦していく過程には大きな知的刺激があります。常に新しい視点を取り入れ、柔軟な思考を求められるこのプロセス自体が、仕事の醍醐味と言えるでしょう。

組織人事コンサルに向いている人の特徴、求められるスキル

組織人事コンサルタントは、企業の成長や変革を支える重要な役割を担う専門職です。そのため、特定の適性やスキルを持つ人材が活躍しやすい傾向があります。この章では、組織人事コンサルタントに向いている人の特徴や求められるスキルについて整理して解説します。

向いている人の特徴:専門性と対人力を兼ね備えたバランス型の人材

組織人事コンサルタントには、高度な専門性と対人能力の両方が求められます。例えば、抽象的で複雑な課題に柔軟に対応するための思考力が重要です。人や組織の問題には明確な解がない場合も多く、仮説思考や構造的なアプローチを駆使して解決策を導き出す力が必要とされます。

また、経営陣から現場の従業員まで幅広い層と関わる中で、人への関心と信頼構築力も欠かせません。相手の立場や状況に共感しながら、信頼関係を築く力が非常に重要です。そして、変化の速い人事領域に対応するため、継続的な学習意欲も不可欠です。制度や法律、テクノロジーの進化に合わせて知識をアップデートし続ける姿勢が求められます。

求められるスキル

組織人事コンサルタントが実際の業務で求められるスキルには、以下のようなものがあります。

コミュニケーション能力

クライアントとの信頼関係を築き、課題を的確に引き出すためには、傾聴力・説明力・質問力をバランス良く発揮する必要があります。

分析力と課題発見力

組織診断や人事データの分析を通じて、問題の本質や構造的な要因を見極める力が求められます。

論理的思考と構造化スキル

多くの情報を整理し、仮説を構築して明快に説明する力は、提案資料や報告書作成に不可欠です。

人事領域に関する専門知識とトレンド理解

制度設計、労務管理、DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)、人的資本開示などに関する知識と、最新の業界動向への理解が必要です。

専門性と信頼性を高める「資格」と「経験」

組織人事コンサルになるために必須な資格はありません。ただし、特定の資格や実務経験は、選考時の評価を高めるだけでなく、実務においても大きな強みとなります。

まず、資格に関しては、キャリア支援や労務管理、組織分析のスキルを証明するものが特に評価されます。たとえば、国家資格キャリアコンサルタントや社会保険労務士は、法的知識や面談スキルの証明となります。中小企業診断士は、経営・財務・人事などを幅広く学ぶ国家資格であり、経営前提を理解した上で人事課題を捉える力やクライアントへの説得力を補完する効果があります。

また、GCDFやアセスメント系資格(MBTI®、DiSC、EQなど)は、グローバルな場面や特性分析で活用されるため、専門性をアピールするうえで有効です。さらに、MBAなどの学位は、マネジメントや人的資本経営に関する深い理解を示すものとして高く評価されます。

一方で、実務経験も重要な要素です。人事部門での制度設計や採用、育成などの経験は、即戦力としての評価を得やすくなります。また、他領域でのコンサルティングやプロジェクトマネジメントの経験は、課題解決力やステークホルダー調整力といった、汎用的なスキルが活かされるため、幅広い場面で役立ちます。

資格は専門性を裏付ける証拠となり、実務経験は実行力を示すものです。これらをバランスよく備えることで、組織人事コンサルタントとしての価値を大きく高めることができます。

人事組織コンサル 研修風景

組織人事コンサル企業の紹介

組織人事コンサルティング業界には、国内外に多数の有力ファームが存在します。ここでは、日系・外資系それぞれの代表的なコンサルティング会社について、特徴や強みを簡潔にまとめました。企業選びや転職活動の際の参考情報としてご活用ください。

日系ファーム:シンクタンク系

金融機関・総研系列のグループに属し、経済調査や政策提言も行う。経営全般と連動した制度設計に強み。

社 名特 徴
野村総合研究所(NRI)経営戦略から人材戦略まで一気通貫の支援が可能な総合コンサルティングファーム。人材アセスメントや人事制度改革においても大手企業との実績多数。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の総合コンサルファーム。人事制度設計、働き方改革、人材戦略策定など、企業の持続的成長を支える組織・人材コンサルティングで豊富な実績を持つ。
三菱総合研究所(MRI)経済・社会分野の調査分析基盤を背景に、人事制度設計・政策対応支援~組織風土改革まで広域で支援。政策連動型の人的資本経営設計に強み。
日本総合研究所(JRI)三井住友フィナンシャル・グループ系列の総合型シンクタンクとして、安定性と調査力を活かした等級制度設計や人材戦略選定に定評。金融系企業を中心としたクライアント基盤。
NTTデータ経営研究所IT・デジタル領域に強みを持ち、HRテック導入や人事DXを含む組織開発支援に展開。データドリブンな制度・戦略設計が特徴。

日系ファーム:人材系

採用・教育などHR領域にルーツを持ち、研修やアセスメントと連動した人事制度支援に強み。

社 名特 徴
リクルートマネジメントソリューションズリクルートグループに属する組織・人材開発支援の専業ファーム。採用、育成、制度設計に関する豊富なアセスメントや研修コンテンツを保有し、理論と実践の融合に強みを持つ。
パーソル総合研究所パーソルグループの調査研究・人材開発部門。エンゲージメント調査や組織診断、研修・育成プログラムの設計・運営に強みを持ち、人的資本経営支援にも注力している。
インヴィニオ組織開発・リーダー育成を専門とする人材開発ファーム。アセスメントやシミュレーション型研修を強みに、管理職層の育成や変革リーダー支援に特化。
グロービスビジネススクールでの教育事業を母体に持ち、人材育成・マネジメント層向けプログラムを通じたコンサルティングを展開。経営視点と現場視点を融合し、企業内リーダー育成や組織開発支援を一体的に提供。
アルーグローバル人材育成・階層別研修・人事コンサルの3領域で支援を展開。独自研修「100本ノック」やeラーニング「etudes」を保有。国内外で800社超の支援実績を持ち、成果重視の伴走型支援が特徴。

日系ファーム:独立系

特定の企業グループに属さず、専門性と中立性を武器に幅広く展開。実効支援や現場定着まで深く関与。

社 名特 徴
クレイア・コンサルティングアーサー・アンダーセンの人事コンサルティングチーム出身メンバーにより設立。組織・人事領域に特化し、制度設計から運用定着支援までを一貫して提供。実効性の高いコンサルティングと、現場への深い伴走が特徴。
日本能率協会コンサルティング(JMAC)製造業・サービス業問わず、組織開発や人材マネジメント支援を手がける老舗コンサル企業。現場改善と人材育成の両面からのアプローチに強みを持つ。
セレブレイン教育研修・HRテック・エグゼクティブサーチなど幅広く展開。リクルート出身の創業者による、100~3,000人規模企業対象の組織変革・営業・人事制度支援が中心。
フィールドマネージメント・ヒューマンリソース(FMHR)経営戦略系ファームから派生し、組織開発・制度設計の実効支援に特化。大手航空、食品、化粧品等の多様な業界で、現場伴走型コンサルを実施。
レジェンダ・コーポレーション独自組織診断・人事制度設計と企業文化変革に注力。大手からベンチャーまで幅広く企業規模・業界をカバーし、現場改善支援にも定評あり。

外資系ファーム

グローバル人事制度や報酬設計、人的資本開示といった先進テーマに強みを持ち、専門特化した組織人事コンサルティングを展開。

社 名特 徴
マーサー(Mercer)世界最大級の人事コンサルティングファーム。報酬制度設計、福利厚生、人的資本経営、人材アナリティクスなど、幅広いサービスを展開し、外資・日系双方の大企業クライアントを多数抱える。
ウィリス・タワーズワトソン(WTW)報酬・年金・福利厚生設計に強みを持つグローバルファーム。近年ではDEI(多様性・公平性・包摂性)支援やエンゲージメント調査にも注力。
コーンフェリー(Korn Ferry)経営幹部のリーダーシップ開発や組織設計に強みを持ち、アセスメントや人材戦略立案においてグローバルスタンダードの知見を有している。
PwCコンサルティング (PricewaterhouseCoopers)PwCの日本法人で、人事戦略や組織変革に関するコンサルティングを提供。データ分析やテクノロジーを活用したソリューションが特徴で、複雑な人材課題に対応する実績がある。
デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)デロイトグローバルの日本法人。人的資本経営、組織設計、HRテクノロジー導入など人事領域全般に強みを持ち、グローバル案件やデジタルHRの先進事例も豊富。

組織人事コンサルの転職事情

組織人事コンサルティングは、人的資本経営や人事DXの推進といった社会的潮流を背景に、注目度が高まっている分野です。企業側からの需要も拡大傾向にあり、特に人事部門や組織開発の経験を有する人材にとって、専門性を活かしたキャリアパスの一つとして有力な選択肢となっています。

職位ごとの業務と年収水準の概要

組織人事コンサルティングファームでは、役職(グレード)ごとに担当する業務や求められるスキルセットが異なり、それに応じて報酬水準も段階的に上がっていきます。以下は、日系および外資系ファームの一般的な職位構成と、各グレードにおける平均的な年収目安です。

役職主な業務内容日系ファーム
年収目安
外資系ファーム
年収目安
アナリスト/ジュニア組織調査、サーベイの集計・分析、資料作成補助など400〜550万円550〜600万円
コンサルタント人事制度設計、タレントマネジメント施策、サーベイ設計・実施など600〜800万円800〜1,000万円
マネージャープロジェクト全体の管理、制度統合、人事DXの実行支援など800〜1,100万円1,000〜1,400万円
パートナー/ディレクター案件獲得、組織戦略立案、人的資本開示やカルチャー変革の推進1,200〜1,800万円1,800〜3,000万円以上

※あくまで参考値であり、所属ファームや個人の成果、担当業務内容によって変動があります。

外資系ファームでは成果主義的な評価制度を導入しているケースが多く、個人の売上貢献やプロジェクト責任の大きさによって年収が大きく伸びる傾向があります。一方で、日系ファームは組織としての育成重視・階層構造が比較的明確で、安定性を重んじる風土を持つ傾向があります。

転職活動の際の注意点や成功の秘訣

組織人事コンサルへの転職では、他領域のコンサルとは異なる評価ポイントが存在します。組織人事コンサルへの転職で成功するために押さえておきたい実務的なアプローチを解説します。

・人事・組織領域での「接点」を具体化する
運用経験や企画参画の実績がある場合は、部門を問わず「人材」「組織」に関わったエピソードを具体的に整理することが有効です。職務経歴書では制度改善の経験や横断的プロジェクト参画など、人的テーマとの関与を強調しましょう。

・自己PRは「志向性」と「論理性」の両立がカギ
組織人事コンサルでは、ヒューマンキャピタル領域に対する強い関心と明確な問題意識が不可欠です。同時に、課題を構造化し、改善策を論理的に提案できる力も問われます。

自己PRや志望動機では、「人と組織に対する関心」と「これまでの経験との接点」を一貫性のあるストーリーで伝えることが重要です。関心の理由や自分が果たせる役割を明確にすることで、説得力が高まります。

・ファームごとの選考傾向を理解する
日系ファームでは人物重視の面接が中心となり、志向性とカルチャー適合を丁寧に見極める傾向があります。一方で外資系では、ケース面接や論理的思考を重視する設問が出されることが多く、明確なロジック展開が求められます。

・業界情報は専門エージェントを活用する
組織人事コンサルはファームによって業務スタイル・文化が大きく異なるため、業界知見のある転職エージェントとの面談を通じて情報を得ることが有効です。表面上の求人票では読み取れない内情や特徴を掴みやすくなります。

人事組織コンサル 握手

まとめ

組織人事コンサルは、人的資本経営や組織変革を推進する重要な専門職であり、今後もますます需要が高まる分野です。本コラムでは、仕事内容や求められるスキル、主要ファームの特徴、そして転職成功のポイントを詳しく解説しました。

自身の経験や志向と照らし合わせながら、正確な情報収集と戦略的な準備を進めることで、組織人事コンサルというキャリアを選択肢のひとつとしてご検討いただければ幸いです。

具体的な転職活動やキャリア相談をご希望の方は、プロフェッショナルバンクまでぜひご相談ください。専門のキャリアアドバイザーがあなたの強みを最大限に活かすサポートをいたします。

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