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2019年最新トレンド「職場スカウト採用」の概要や導入の有用性を解説

2019年最新トレンド「職場スカウト採用」の概要や導入の有用性を解説

リクルートキャリアは2018年末に「中途採用領域における2019年のトレンド予測」を発表しました。この予測では、中途採用領域における2019年のキーワードとして「職場スカウト採用」が挙がっています。この「職場スカウト採用」とはどのような採用手法なのでしょうか。今回は「職場スカウト採用」の概要とその有用性について解説していきます。

「職場スカウト採用」は配属先の職場主導で定着率向上を狙う採用手法

最初に「職場スカウト採用」とは何かを概観します。
まだ明確な定義はないようですが、リクルートのトレンド予測では、

“人事が孤軍奮闘するのではなく、配属先の職場長や同僚が採用活動を主導し、普段通りのありのままの職場で、仕事の進め方や習慣、そして働く環境を共有し、将来のチームメイトとして、入社後のリアルをすり合わせる”

引用元:リクルートキャリア「2019年トレンド予測中途採用領域」
https://recruit-holdings.co.jp/newsroom/pdf/20181217_13.pdf

ということであると説明されています。
また、従来の中途採用方法との違いを端的に解説した図も掲載されています。

図3
引用元:リクルートキャリア「2019年トレンド予測中途採用領域」
https://recruit-holdings.co.jp/newsroom/pdf/20181217_13.pdf

これらを見ると、職場スカウト採用とは、入社後の定着率を高めるために、人事部ではなく現場が採用活動の主役として行うものであること。そして、企業側から提供する情報内容は、配属先の文化や風土といったより日々の業務と関係の深いものであることが読み取れます。

職場スカウト採用が求められる背景には深刻化する人材不足がある

定着率の向上を狙った採用手法が求められている理由は、少子高齢化による労働力人口の減少を背景に人材獲得競争が激化しており、中途採用者の職場定着・早期離職防止が企業にとって喫緊の課題になっているためです。

中小企業庁が発表している「中小企業白書」(2018)によると、「経営上の問題点」として「求人難」を挙げる企業の割合が、2010年代から増加の一途を辿っており、2017年には30%以上に達しています。 [注1]
また、リクルートワークス研究所の「中途採用実態調査」(2017)でも、中途採用人員を「確保できなかった」企業(49.9%)が「確保できた」企業(49.5%)を調査開始以来はじめて上回ったという結果が出ています。[注2]

今後もますます人手不足の影響が拡大していく可能性があるこのような状況で、コストをかけて採用した優秀な人材に早期離職されると、そのコストが無駄になるばかりでなく、現場の士気にも悪い影響を及ぼしかねません。
「職場スカウト採用」は採用の先にある人材の職場定着という、より現代的な課題に効果的に対応できる方法として出てきたといえるでしょう。

職場スカウト採用は「リファーラル採用」や「RJP」と同様企業のリアルな情報を伝えられる

「職場スカウト採用」が定着率向上を主軸に据えた施策であることがわかりましたが、実際のところ効果は見込めるのでしょうか。ここで比較してみたいのが、同じく定着率の向上が見込める採用方法として有名な「リファーラル採用」と「Realistic Job Preview(以下RJP)」です。

従業員が採用候補となる人材を紹介するリファーラル採用において注目すべきは、候補となる人材が、紹介者から職場に関するさまざまな情報を入手しているという事実です。社内情報を手に入れることで、候補者は自分がその企業にマッチするかどうかをより高い精度で自己判断できます。

また、企業の実態について良い情報だけではなく、悪い情報も含めて企業のありのままを候補者に提示するRJPも、ミスマッチを軽減してより定着率を上げていく手法です。企業のありのままの姿を候補者が知ることで理想と現実のギャップを埋められるため、よりリアルな情報をもとに入社を判断できる点は、RJPの特徴といえるでしょう。
エン・ジャパンでは、RJPをもとに「体感転職プログラム」という入社前職場体験を実施していますが、このプログラムを実施した社員に限ると、退職率がなんと0%という報告もあります。[注3]

リクルートキャリアが転職者向けに行った調査では、転職者が転職前に知りたくても知ることができなかった代表的な情報として「配属される部署の風土や慣行」が挙げられています。[注4]

また、同社の別のアンケート調査でも、「求職者からの面談・面接の要望」において求められているのは、「配属される職場長と直接会話ができる場」(57.1%)、「配属される職場メンバーと直接会話ができる場」(44.2%)という結果に。[注5]

リファーラル採用やRJPは、このような転職者の要望に応え、職場のリアルを伝えられるからこそ、定着率のアップにつながっている側面があるといえるでしょう。

今回取り上げている職場スカウト採用では、職場体験や長短のインターンシップ、社員とのディスカッション・ワークショップなどを行います。採用候補者は、これらの活動を通して入社前に現場の社員との情報交換を行ったり、リアルな職場に飛び込んだりすることで、自分が入社しようとしている組織のありのままの姿を知ることが可能です。

リファーラル採用やRJPとは情報の入手の経路や方法において異なる部分はありますが、職場スカウト採用でもこれらの手法と同じように、候補者が企業の風土や文化について多くのリアルな情報を入手できます。したがって、職場スカウト採用を導入すれば、企業と候補者のマッチングをより高い精度で判断でき、定着率の向上を促すメリットを期待できそうです。

職場スカウト採用を成功させるには人事部・現場間の情報共有が重要

職場スカウト採用では、現場が主役となって候補者の評価を行うため、事前の準備や制度設計が重要になります。
現場の負担も増えますし、情報漏洩やセキュリティに配慮しつつ、取り繕わないありのままの姿をさらけ出していくバランス感覚も必要です。また、現場主導の採用となると、どうしてもいま現場に欲しいスキルを持っている人材に評価が偏ってしまい、将来的な採用戦略の視点が抜け落ちてしまうこともあります。

職場スカウト採用を導入する際には、事前研修を行うなどして人事部と現場との間でお互いに情報を共有しあい、効果的な施策を用意していくことが大切です。

[注1]2018年度版 中小企業白書              http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/index.html
[注2]リクルートワークス研究所「中途採用実態調査2017年度実績」 http://www.works-i.com/pdf/180627_midcareer.pdf
[注3]机上論に終わらせない! 「RJP理論」の活用事例 ~HR EXPO2016 特別講演から~ https://corp.en-japan.com/success/3400.html
[注4]リクルートキャリア「求職者が転職活動で“知り得なかった情報”トップ3」https://www.recruitcareer.co.jp/news/20180524.pdf
[注5]リクルートキャリア「配属される職場の情報」 https://www.recruitcareer.co.jp/news/20180123.pdf

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