私の30代
INTLOOP株式会社
林 博文氏

SPECIAL INTERVIEW #03
INTLOOP株式会社

代表取締役
林 博文

はやし ひろふみ/同志社大学法学部法律学科卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)、スタートアップ企業、再度アクセンチュアを経て、2005年2月にINTLOOP株式会社を創業。
事業戦略、BPR、プロジェクトマネジメントなど、幅広いコンサルティング経験を有する。起業後は自身の得意とするコンサルティング事業を行い、2015年より積極的投資を行う攻めの経営へ方針転換。社会ニーズを見極める洞察力と事業推進力で「自らが事業創造を行うコンサルティングファーム」としてINTLOOPを成長させ続けている。

今回の『私の30代』では、2005年に32歳で起業後、アクセンチュアでのコンサルタント経験を活かし、フリーランスと自社のコンサルタントの融合でソリューションを提供する事業モデルを確立、2022年に東証グロース市場への上場を果たした林博文氏をお招きしました。直近の約10年でINTLOOPを売上10億から300億まで成長させた林氏に、自身の30代について、経営者になるために必要なことについて失敗談も交えながら、語っていただきました。

15年前に立てた事業プランの通りに成長させるのが自分の役割

-まずは貴社のビジネスモデルについて、特徴や強みは何ですか。

当社の強みは、自社にコンサルタントを抱え、かつフリーランスの登録者が4万人超いるので、この2つの融合によるメリットを顧客に提供できることです。この仕組みにより、当社の会社規模では本来難しい、幅広い業種や内容の仕事を受けられています。

また、専業のコンサルティング会社に比べてコスト面でも大きな競争力を持っていると思います。このビジネスモデルは当社がパイオニアだと思っていて、今は同様のビジネスモデルを展開しようという会社はあるものの、自社に経験豊富なコンサルタントがいないと案件が取れず、そのため、登録者も集めづらいとも聞いています。

それに対して、みらいワークスなどのフリーランスに案件を紹介している会社と、アクセンチュアのように専業でコンサルティングをやっている会社がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあると思っています。

フリーランスの方は、指示のもとに単独で動くことには適していますが、そのスキルの高さゆえに、集団になったときに方向性が揃わないことがあります。一方で、専業のコンサルティング会社はコンサルタントの人数分しかスキルを持っていないため、受けられる仕事の規模や範囲に制限があります。

・フリーランスコンサル向け案件紹介サイト「ハイパフォーマーコンサルタント
・フリーランスエンジニア向け案件紹介サイト「Tech Stock

-その中で、林社長の重要な役割を教えてください。

15年前に立てた事業プランの通りに成長するよう経営することですね。

現在、当社は連結で300億円近い売上がありますが、10億円になるくらいまでは、コンサルティングの案件が順調に取れていたことに満足し、フリーランスの事業構想はありながらも、あまり会社を大きくしようとしませんでした。そうすると、会社が成長しない環境に社員たちは不満を持ち、幹部を中心に辞めていったのです。

そこで私は成長に向けて舵を切ろうと決心し、当時の売上10億円から15年で1000億円まで成長させる事業プランを立てました。コロナもあり1年くらい遅れましたが、今のところほぼ計画通りです。そのため、この先もプランが計画通りに進むよう経営していくのが自分の役割と思っています。

-そこで感じる仕事の面白みはなんでしょうか?

私は戦略を考案することを得意としているのですが、その戦略がぴったりはまったときにやりがいや面白みを感じますね。

例えば、人材配置においては、外部から採用するのか、内部から昇格させるのかを考えながら、内部の人材は若手の段階から将来性を見込んで意図的に上位ポジションに登用することもあります。もちろん、若手が新しい環境に戸惑うこともありますが、それは成長の一環と捉えています。

また、現場は自部門で育てた人材が異動することは嫌がりますし、トラブルが起こるリスクも理解していますが、私は強行します。それらは瞬時に解決されることも多いですし、結果として組織全体の成長に繋がっていると感じるからです。

インタビュー画像1_林氏

コンサルティングの仕事を通して自分の強みを知った

-30代において、今のキャリアを築く上で特に影響を受けたこと、転機になったことは何ですか?

私はアクセンチュアに2回入社していますが、2回目の在籍時に担当したプロジェクトが、独立できるという手応えを得た、転機となる出来事でした。

もともと独立志向はありましたが、20代の頃はまだそのタイミングとは思っておらず、一度ベンチャーに転職して、その後再びアクセンチュアに戻りました。そこでアクセンチュア、顧客、ベンダー等の方々含めて1000人くらいをマネジメントするような、何百億円規模の大きなプロジェクトを任せてもらいました。

人とコミュニケーションを取って何かを調整するような仕事が多かったのですが、最初は右も左もわからずやっていました。結果的に成果が出て高く評価され、自分はこういう仕事が得意だと気付きました。実は最初からプロジェクトマネージャー(PM)だったわけではなく、プロジェクトが始まるときはアクセンチュア側の真ん中くらいの立場でしたが、1年くらいでPMまで登り詰めました。

そこから、当時31歳だった私は、営業やマネジメントのような分野であれば自分の能力を発揮できると確信し、自信を持って独立しようと思えました。コンサルティングの仕事を通して自分の強みを知り、独立する自信を持つことができたこの出来事が大きな転機だと思っています。

-それは一方でアクセンチュアでの仕事が向いていたとも言えると思いますが、そのままアクセンチュアに残ることは考えなかったのですか?

アクセンチュアは世間一般的に給与のいい会社ではありましたが、そのぶん勤務時間も長かったので、独立したほうが得かなというのは漠然とありましたね(笑)。ダイナミックに組織を動かしたいという志向があり、そこに到達できる位置にいるのであれば辞めるのはもったいないと思いますが、私は独立志向も強かったですし、失敗したらフリーランスでもやっていけると思っていたので独立するという選択をしました。

-30代で影響を受けた人、印象的な出会いはありますか?

独立して最初に受けた案件が、経営トップと再建計画を立てるような責任の大きな仕事でした。外部からの資本も入っていて、会社の価値を上げなくてはいけないこと、その会社のトップに信頼されて再建を共に担う役割だったので、とても大きなプレッシャーがありました。

特定の個人ではないですが、その案件で出会った経営層の方々やフリーランスの方々、ひいてはその案件との出会いは、それからの私が会社を経営するうえで、最も大きな影響を受けた出会いだと思います。自分でも胆力が格段に上がったと実感できる仕事でしたから。

実はその案件を紹介してくれたのは当時、投資ファンドで働いていたアクセンチュア時代の同期でして、INTLOOPの語源であるIntroductionのLoopを創業から体現していたんですよね。

-30代でもっとやっておけばよかったことはありますか?

逆に「やらなければよかったこと」になるのですが、その再建案件が終わった後、営業がうまくいき、案件も安定して取れていたので、売上10億円くらいまでは順調に成長しました。経営が軌道に乗り、少しずつ社員やフリーランスの方に任せられるようになってきたこともあり、もともと興味のあった海外のビジネスを始めてみたんですよ。

香港、上海、ベトナムなどでお酒や食品、化粧品などを売るというビジネスを5年くらいやっていたのですが、かなり大きな損害を出してしまいました。これはこれで貴重な経験とも考えられますが、その時間や費用を本業に費やしていたら売上1000億円に向けた計画ももっと進展していたと思っています。

また、私個人のキャリアとしても、上場するのに49歳までかかってしまったので、30代から40代前半くらいで上場できていれば、今ごろもっと上を目指せたのではないかという思いもあります。

-30代で仕事以外に心掛けていたことは何かありますか?

それはないですね、仕事しかしていなかったです。運動もしていませんでした。当時はゴルフも付き合いで年に何回か行くくらい。毎日のように飲みに行ってはいましたが、それもビジネスの関係者だけです。

さすがに体を壊しまして、検査結果の数値も徐々に悪くなり、38歳のときに医者にこのままの生活を続けていたら命がないと言われ、健康のためにジムに行き始めました。その後、体調は回復しましたが、今では趣味として週に数回通うほどになっています。

インタビュー画像2_林氏

自信を持ってやり切ることがいちばん重要

-経営者になるために必要なことは何だと思いますか?

自信を持ってやり切ることがいちばん重要かなと思います。例えば、売上10億円から1000億円の計画を立てたときも、やはりそう簡単なことではないので、誰も信じてくれない。しかし、300億円くらいになってくると社員もいけるのではないかと思ってくるのです。

私の場合は周囲に言うことで自分にプレッシャーをかけています。自信を持って、覚悟を持って、有言実行することがいちばん大事だと思います。自信を持つためには、仕事を通して自分の得意なことや適したポジショニングを見つけることが秘訣かもしれません。

あとは、会社を大きくするためには権限移譲をすることが不可欠だと思います。大きくなりきれていない会社は、権限委譲していると言いながら、実態として全然任せられていないということがよくあります。そういう意味では自分だけでなく部下を信じることも経営者として大事ですね。

私は自分に自信のない人ほどマイクロマネジメントをしがちだと思っています。経営者として外堀を作っていくことや人脈作りは真似ができるものではなく個人の才覚だと思います。しかし、ある程度形ができたものを動かしていく事業運営はテクニックなので、教えたり経験させたりすることでできるようになります。

-林社長が思う経営者に向いている人はどういった人でしょうか?

私は誰かの真似をしたことはなく、尊敬している経営者もあまりいません。経営書も一時期たくさん読みましたが、はまりすぎてその内容を全て社員に指示してしまい、大変なことになったので読むのをやめました。今では当社の経営陣から、経営書に書いてあることと真逆のことをやっているとよく言われます。

私の場合は独立する前、独立した直後の経験でもお話をしたように、仕事を通して学ぶほうが向いているのでしょうね。

逆に経営者に向いていない人はと聞かれると、人嫌いな人だと私は思うのですが、たまに人嫌いな経営者の方に出会うことがあるので一概には言えないかもしれません(笑)。

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新規事業に少しずつフォーカス

-INTLOOPは今後どういった方向に進んで行きますか?

最近、戦略コンサルティングを行う子会社を立ち上げました。既存のITコンサルティングのビジネスはまだまだニーズがあるので拡大させながら、最上流のコンサルティングを始めることで、既存のビジネスと組み合わせた上流から下流までのコンサルティングができる体制を整えるということが目的の一つです。

また、戦略部隊ができると、新規事業を任せられるメンバーを持つことにもなるので、新規事業にも少しずつフォーカスしていくことになると思います。今私はその仕掛けづくりに注力していて、既存事業は徐々に任せていっています。新規事業が軌道に乗ったらまた任せてという繰り返しですね。

売上1000億円計画の先はどう考えていますか?

社内では、その目標はかなり大胆だと言われていますが、実際には売上1兆円までの計画を立てています。ただ、そこまで自分でやるつもりはなく、1000億に至るまでに引き継げる人材を準備することを考えています。すでに社内には候補となる人材がいますが、外部からも採用することで、競争が促されて実現可能性も高くなるのではと考えています。

-経営者を目指す人がINTLOOPに入るメリットは何がありますか?

まず当社は指示待ちのスタンスでは成長は望めません。そのかわり、能力とやる気があれば出世は早いと言えます。任された仕事に加えて、いかに仕事を取っていくか、いかに全社的な仕事に首を突っ込むかでポジションが決まっていくので、貪欲な人は合うと思います。そういう人には成長の機会や給与など得られるものは多いはずです。

前述した今後の会社の方向性からも、事業を任されたり新規事業創出に携われたりというチャンスはたくさんあります。また、社内の成長意欲は一般的な会社よりも高いと思うので、経営者を目指す方にはいい環境だと思います。

-最後に読者にメッセージをお願いします。

転職をする際に、あまり後ろ向きな気持ちでは辞めてほしくないと思います。現職で成果を上げて関係性も維持しながらビジネスマンとして辞めるべきですね。マイナスで辞めて次で成功する人は少ないと思っているので、仕事を通じた経験や自信を持って、現職での花道を作って次のステージに挑んでほしいですね。

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記:原田 雅志 フォト:長田 慶