「セルフエフィカシー」とは?高めるための5つの方法も解説

中途採用者の入社後の成績が芳しくないことを懸念している人事担当者は多いのではないでしょうか。中途採用者は新卒採用とは違った困難に直面しており、活躍を後押しするためには、中途採用者の「セルフ・エフィカシー」を高めることが重要です。

今回は社員の成長にも強く影響を及ぼす「セルフ・エフィカシー」についてご紹介します。

セルフ・エフィカシーとは目標達成に対する「自己効力感」のこと

セルフ・エフィカシー(self-efficacy)とは、カナダの心理学者A・バンデューラが提唱した概念で、ある状況下において自分が必要とされる行動を上手に行うことができるかどうかという可能性の認知のことを指しています。日本語では「自己効力感」と訳されているものです。

具体的には、ある行動について「自分は達成できる」「達成できる能力がある」と考えていれば、「セルフ・エフィカシーが高い」状態にあり、「自分は達成できない」「能力がない」と考えていれば、「セルフ・エフィカシーが低い」状態にあるといえます。

実際に、ある行動に関してセルフ・エフィカシーが高い状態にあると、その行動を上手く遂行しやすくなる、行動を達成するための努力を惜しまない、失敗や困難に直面しても諦めにくくなるなどの効果が見込めます。逆に、セルフ・エフィカシーが低い状態にあると、努力を怠ったり諦めやすくなったりと逆の現象が起こりやすくなります。セルフ・エフィカシーを高めていくことがどれほど重要かがわかるでしょう。

バンデューラは、誰しもがセルフ・エフィカシーを通して物事を検討して決断していると考えました。セルフ・エフィカシーは、スポーツや教育の場面でも応用されており、当然のことながらビジネスシーンにおいても非常に重要です。課題解決や目標達成に関して達成できるという認識を持って臨むのと、どうせだめだと思って臨むのでは、取り組みの姿勢に自ずと違いが出てくるためです。

セルフ・エフィカシーとよく混同される概念に「自尊心」がありますが、自尊心が自分を信じている「自信」を意味するのに対し、セルフ・エフィカシーは、自分がある目標を達成できるかどうかの可能性に関する「認知」である点に違いがあります。混同しないようにしておきましょう。

セルフ・エフィカシーを高める5つの方法

セルフ・エフィカシーを高める具体的な方法についてみていきましょう。

(1)成功体験
「成功体験」は読んで字のごとく、成功した体験のことです。目的を達成するまでに下した決断や自分の処理能力に自信を持てるため、セルフ・エフィカシーが高まります。

(2)代理経験
「代理経験」とは、自分のモデルとなる人物が、自分と同じ行動を上手く行った事実を知ることです。自分も上手くできそうだという自信が生み出され、セルフ・エフィカシーが高まります。モデルとなる人間の人物像や置かれている状況が自分自身に似ているほど影響力は強くなります。

(3)言語的説得
周りからの励ましや評価によってセルフ・エフィカシーを高める方法です。励ましや評価をしてくれる相手は、被評価者が信頼を置いている相手であればあるほど高い効果を期待できます。

(4)生理的情緒的高揚
気分が高揚しているときにセルフ・エフィカシーが高まります。スポーツ選手が試合前に気分を高揚させる音楽を聴くなどの方法がこれにあたります。

(5)想像的体験
成功している自分を想像することによってセルフ・エフィカシーを高める方法です。

(1)~(5)の方法のなかでも最も重要なのが「成功体験」です。社員のセルフ・エフィカシーを高めていくためには、適切な目標を設定して「成功体験」を積ませることが重要です。また、達成経験がある人物との接点を作って「代理経験」をさせやすい環境づくりも同時に必要となるでしょう。その他の方法は補助的に用いていくと効果的です。

中途採用者にはセルフ・エフィカシーが低下しないような配慮が必要

ここからは中途採用者とセルフ・エフィカシーの関係性について見ていきます。

中途採用者は採用初期段階において非常に難しい状態に置かれています。小さなきっかけでセルフ・エフィカシーが低下する恐れがあるのです。

中途採用者の中には、前の職場で大きな実績を上げていたとしても、現在の職場で実績を上げられるかどうかわからずに不安な状態で入社される方もいることでしょう。取り扱う商材や取引先も変わりますし、仕事の進め方や同僚との関係づくりといった新しい職場への適応などにも多くの不安を抱えている状態です。

その上、中途採用者は、新入社員とは違って「即戦力」として早期から活躍を期待されています。実際に中途採用者を迎えたことがある人であれば、「お手並み拝見」的な視線を送ったことがある人もいるのではないでしょうか。中途採用者本人としても周囲に頼るわけにはいかないという気持ちを持ちやすく、周囲としても助言がしにくい状況が出現しているわけです。

このように、中途採用者は多くの課題を抱えているにも関わらず、周りに頼れないというある種の逆境に立たされているといえます。

この状況下では、中途採用者はミスを犯しやすく、ミスをしたときのセルフ・エフィカシーの低下も大きくなります。そのため、採用初期の中途採用者のマネジメントには細心の注意を払う必要があるのです。

*成功を積み重ねていけるように適切な難易度の課題を与える(成功体験)
*中途採用者の成功体験などの事例の提示、メンターをつける(代理経験)
*同僚と打ち解けてお互いに信頼し励ましあえる環境を構築する(言語的説得)

上記のようなセルフ・エフィカシーに配慮したマネジメントを行うことで、中途採用者がポテンシャルを発揮できる職場環境を整備していくことが重要です。

セルフ・エフィカシーを意識したマネジメントをしよう

セルフ・エフィカシーが重要となるのは中途採用者だけではありません。誰にとっても必要となります。ビジネスの多くのシーンで目標達成に向けて欠かせないセルフ・エフィカシーのマネジメントは、非常に重要であるといえるでしょう。

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