2019年4月施行の有給休暇取得の義務化で企業に求められるのは「休暇の管理」

労働基準法の改正により、2019年4月1日から有給休暇取得義務化が開始されます。企業(使用者)は、年に10日以上の有給休暇を付与されている社員に対し、基準日から1年以内に5日間の年次有給休暇を取得させることが義務付けられ、違反した場合には罰則が科されます。この有給義務化に上手く対応するためには何をすればよいのでしょうか。
今回は有給取得義務化の概要と企業の対応方法についてご紹介します。

企業は対象となる従業員に対して年5日の有給消化を義務付けられる

最初に有給休暇取得義務化の概要を見ていきます。ポイントは以下の通りです。

*対象となる社員に年5日間の有給休暇取得と有給休暇管理名簿の作成・保存が義務付けされた
*義務化の対象となる従業員は正社員だけではなく、パートやアルバイトも含む
*違反した場合には刑事罰に問われ、罰金30万円の支払いが生じる

2018年7月に「働き方改革関連法案」が成立しました。これにより、労働基準法が改正され、2019年4月から全ての企業で年5日の年次有給休暇を従業員に取得させることが義務化されました。また、企業は従業員ごとに有給休暇管理簿を作成し3年間保存することが義務付けられます。

今回定められたのは、正式には「年次有給休暇の時季指定義務」です。なぜ「時季指定」なのかというと、従業員の有給取得が5日未満の場合、企業側が従業員と話し合ったうえで、有給取得時季を指定する必要があるからです。

基本的に有給制度は、従業員から取得の申請を行います。しかし、後述するように、従業員側から有給取得の申請をしづらい雰囲気があり、取得率が上がりませんでした。そこで、従業員を休ませるために、会社が時季指定する制度が新設されたわけです。

義務化の対象となるのは、出勤率が8割以上で年休が10日以上付与される従業員です。対象となるのは次に該当する従業員となります。

*入社から6ヵ月が経過している正社員もしくはフルタイムの契約社員
*入社から6ヵ月以上が経過し週30時間以上勤務しているパート・アルバイト
*入社から3年半以上が経過している週4日出勤のパート・アルバイト
*入社から5年半以上が経過している週3日出勤のパート・アルバイト

ちなみに、有給休暇の付与日数は、勤続年数と労働時間によって決まります。
また、改正法の時季指定義務の対象外となるケースとしては、計画年休制度などにより年5日以上の有給休暇を付与しているケースや、従業員がすでに年5日以上の有給休暇を取得しているケースが該当します。

今回の義務化で無視できないのが、罰則が設けられていることです。義務に違反した企業は、刑事罰として「30万円以下の罰金」を支払うことになります。罰金は、対象となる従業員が1名でも義務違反をした場合にも科されるので十分に注意する必要があります。

有給休暇取得義務化の背景はより時代に即した労働環境で生産性向上を狙うため

今回、義務化に至った背景には何があるのでしょうか。
現在、多くの分野で労働環境が激変し、より「創造的」な働き方が重要となってきています。この「創造性」を職場で発揮してもらうためには、心身ともにリフレッシュした状況で働いてもらう必要があります。そのために重要となるのが「休暇」なのです。

しかし、日本の有給取得率は高くありません。厚生労働省が2018年に行った調査によると、民間企業の労働者の有給休暇取得率は、平均で51.1%です。[注1]
この取得率は他の先進国や新興国と比べても低く世界最低レベルとなっており、改革が急務となっています。[注2]

また、同庁の別の調査によれば、日本の労働者は年次有給休暇の取得にためらいを感じている人が63.7%と、半数以上が休暇を申請しにくい雰囲気があるようです。[注3]

現在、働き方改革が進められ、生産性向上が目標に掲げられています。労働環境をより時代に即したものに変革していくためにも、今回の改革は重要であるといえます。

従業員の休暇管理方法には「個別管理方式」と「計画年休」がある

それでは、企業はこの有給取得義務化にどのように対応していけばよいのでしょうか。ここでは、この改正法を遵守するために重要な従業員の管理方法について見ていきます。

*「個別指定方式」:従業員ごとに消化日数をチェックする方法
*「計画年休」:事前に有給消化日を決めて個人管理の手間を省く

「個別指定方式」は、従業員ごとに消化日数をチェックし、5日未満になりそうな従業員に企業側から有給休暇取得日を指定する方法です。例えば、「期間が終わる○ヵ月前までに有給休暇が5日未満の従業員については会社が休暇取得時季を指定する」という制度を定めます。

指定期間前に従業員が有給を消化していれば手間が省けるメリットはありますが、人によって付与日がバラバラの場合、基準日が人によって異なるため、細やかな管理が必要となるなどの手間も発生します。

「計画年休」では前もって計画的に休暇取得日を決めておきます。具体的には、有給休暇を使って社員の誕生日にバースデー休暇を定めたり、連休の中日を休暇にしたりすることです。

従業員はためらうことなく有給休暇を取得でき、企業にも従業員ごとに休暇管理をしなくてもよい大きなメリットがあります。また、繁忙期を避けたり、GWに続けたりと業務に影響が出ない時期に一斉に消化することも可能です。なお、計画的な有給の付与を行う場合には、労働組合や労働者の過半数を代表する者との間で労使協定を結ぶ必要があります。
罰則を受けないように休暇管理には万全の体制の構築をしていきましょう。

できることから有給休暇取得義務化への対応を

有給休暇取得義務化は社員のポテンシャルを引き出す労働環境の構築に重要な役割を果たします。企業にとっては、休暇管理以外にも様々な課題が残されていますが、できることからひとつひとつ対応して変革を進めていくことが重要です。

[注1]厚生労働省 「賃金労働時間制度等総合調査」労働時間制度  https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/dl/gaiyou01.pdf

[注2]【世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018】 エクスペディア  https://welove.expedia.co.jp/press/40915/

[注3]制度の概要│厚生労働省│都道府県労働局│労働基準監督署  https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/sokushin/summary/

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