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女性リーダーの特徴・強みを徹底解説!SDGsを意識した新たな組織の在り方とは?

女性リーダーの特徴・強みを徹底解説!SDGsを意識した新たな組織の在り方とは?

世界的な目標であるSDGsへの取り組みにより、日本における女性活躍推進も一層加速しています。本記事では、「多様性社会」の実現に向けた女性リーダー登用に関して、特徴から強みを導き出し、これからの日本を支える女性リーダーの育成方法を解説していきます。「多様性社会」には欠かせない、これからの時代を彩る女性リーダー像が分かる内容になっています。

女性リーダーが注目される背景

女性リーダーの登用を検討する企業が増えてきた背景には、コーポレートガバナンス・コードの改訂が大きく影響しています。世界的に促進されているサステナビリティへの取り組みを、日本でも2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂から重要指標として盛り込まれていることが要因でしょう。日本企業も世界のトレンドに合わせ、多様性を重視した組織体制の構築に舵を切っていくタイミングなのです。

とはいえ、これまでの男性中心の組織体制から、単に女性リーダーを登用すれば良いという問題ではありません。これからSDGs(持続可能な開発目標)を達成していくために必要な“新たな取り組み”を実現していく必要があるのです。まずは、女性リーダーにおける現状を確認しておきましょう。

日本企業と外資系企業の違い

日本企業で女性リーダー登用に向けた動きが活発になってきたのは最近の話です。一方で、外国企業や外資系企業では、女性リーダーは珍しいものではありません。まずはこのギャップを埋める努力が必要になるため、日本企業と外資系企業との違いを解説していきます。

日本企業は女性リーダーが少ない

日本企業は、長く続いた“年功序列”の文化があり、勤続年数による人員配置が目立ちました。そのため、出産や育児などのライフイベントにより継続したキャリア形成が困難な女性は、リーダー職になりづらい傾向がありました。

また、日本企業における年代別女性比率からも、女性リーダーが少ない理由が分かります。東洋経済の「CSR企業総覧」によると、40代の女性比率は28.2%、同じく50代では15.9%しかいない状況となっています。年功序列の人事制度が根強い日本企業では、40歳~50歳の役職者が多い中で、適齢の女性リーダー候補の母数が足りていないことが数字からも一目瞭然でしょう。

これに付随して、仕事と家庭の両立をするためにリーダー職への昇進を希望しない女性も多くいるのが現状です。これまでに、お手本とする女性リーダーが少なかった訳ですから、女性が昇進を望まないのも不思議ではないでしょう。

外資系企業は女性リーダーが多い

一方で、外資系企業ではリーダー職に男女の差はありません。男性と女性がそれぞれの特徴を活かし、多様性を武器に活躍しています。
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外資系企業は、ダイバーシティへの意識が高く、多様な人材の確保・育成による組織活性化から長期目線での企業成長を目論んでいます。そのため、積極的に女性リーダーを登用する体制を整えるために、女性リーダー向けの研修が行われている企業もあります。

また、女性リーダーの積極登用には、外資系企業ならではの組織文化と制度が影響しています。日本企業の多くが“年功序列”を重視した人員配置だったのに対して、外資系企業は“成果主義”に重きを置いた制度です。社歴・年齢・性別に関係なく、成果を出せばリーダーとして登用される文化が醸成されており、誰しもがリーダーとして活躍できる環境が整っているのです。

女性リーダーの特徴

まず1つ言えることは、リーダーになる素質がある人材に性別は関係ないということです。多様性が求められる時代においては、各個人の特徴がそれぞれのリーダー像を作り出します。そんな中、本章では活躍している女性リーダーに多い特徴を紹介していきます。

★1:細かい部分に気を遣う丁寧さ

★2:思いやりがあり、聞き上手

★3:高いコミュニケーションスキル

★4:感情に流されない冷静な判断

★1:細かい部分に気を遣う丁寧さ

変化に対して敏感であり、細かい部分まで配慮できるのが活躍する女性リーダーの特徴です。ここでいう変化とは、髪型や身なりだけではなく、内面的な変化も含みます。優秀な女性リーダーは、この些細な態度の変化を敏感に感じ取る能力に長けており、部下が悩みを打ち明けやすい環境を自然と作り出せるのです。

★2:思いやりがあり、聞き上手

優れた女性リーダーは、話の引き出し方が上手いというのも特徴の1つです。これには、女性特有の共感力が好印象を与えていると言えます。自分の話に共感してくれる人に対しては、話す側も気持ちよく話せます。女性リーダーと部下との関係では、隠し事のない信頼関係が生まれやすいのです。

★3:高いコミュニケーションスキル

そして、コミュニケーションにおける女性の特徴として、プロセスを楽しむことが挙げられます。結論を起点としたコミュニケーションも時には必要でしょう。それに加えて、成果を残す女性リーダーはしっかりとプロセスを重視したコミュニケーションを取るため、成功への道標を描くことができます。それにより、成果を出し続けられる再現性の高い組織を作れるのです。

★4:感情に流されない冷静な判断

その場の感情で物事の決断をしないことも、慕われる女性リーダーの特徴です。自分の主張だけではなく、しっかりと周りの意見も尊重しながら最適解へと導いていくことができるため、組織全体で納得感を得ながら業務を進めていくことができます。

このように、女性に求められるリーダー像と一般的なリーダー像は切り離して考えるべきでしょう。女性は「自分はリーダーに向いていない」と思われる傾向が強いですが、自身の能力が必要とされていることに気付いてもらうことも重要なのです。これからは多様性の時代。日本においても理想のリーダー像に変化が表れ始めています。

女性リーダーの強み

前章にて、女性リーダーの特徴を解説しました。この特徴は、ビジネスシーンにおいてどのような効果を発揮するのでしょうか。ここからは、特徴を活かした女性リーダーの強みを3つ解説していきます。

①交渉力

女性リーダーの交渉力は、「高いコミュニケーションスキル」と「感情に流されない冷静な判断」という特徴がもたらします。
勢いのある強引な交渉とは異なり、結論に至るまでの過程を加味した説得力のある交渉が強みです。感情に流されることのない冷静さを持ち併せているため、準備を怠らず、交渉の場でも焦ることなくどっしり構えていられるのです。譲歩できる部分と譲れない部分の線引きもはっきりしているため、シナリオ通りに交渉を進める力を持っています。

②改善力

改善力は、女性リーダーの特徴である「細かい部分に気を遣う丁寧さ」から生じる強みです。
細かい部分の気付きが多いことは、成功の要因や失敗の原因に対するフィードバックの的確さに繋がり、同じミスを犯さないチームに成長していくのです。

③モチベーター

そして、女性リーダーにはモチベーターとしての側面もあります。これは、女性リーダーの「思いやりがあり、聞き上手」という特徴が影響しています。
部下のモチベーションが低下する原因として、心理的安全性に対する不安感が挙げられますが、話しやすい環境作りを得意とする女性リーダーの下では、心理的安全性を確保しやすいと言えます。人間関係と業務に対する不安がない状態で仕事をすることは、モチベーションの向上に繋がるのです。

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企業における女性リーダー育成のメリット

女性リーダーの育成は政府が推し進める施策でもあるため、計り知れない効果をもたらすでしょう。本章では、具体的にどのようなメリットがあるのかを解説していきます。
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メリット①:女性管理職30%への第一歩

政府は女性管理職比率30%という目標を掲げ、特に上場企業に対して女性管理職の登用を呼び掛けています。しかし、現時点で女性管理職比率30%の目標を上回っている企業は1割未満であり、各社苦戦しているのが現状です。前述したとおり、日本の管理職適齢(40~50代)の女性社員の比率は少なく、外部からの人材登用だけで女性管理職を確保するのは困難でしょう。

そこで、社内育成による女性リーダー登用を促進することで、将来的には女性管理職を内部から誕生させ続ける良い循環が生まれるのです。

メリット②:企業ブランディング

女性リーダーを育成することで、企業のイメージアップにも繋がります。女性活躍推進に力を入れている先進的な企業であること、多様性を武器にした洗練された組織を目指していることを世の中にアピールする機会であり、結果的に人材獲得競争にも良い影響を及ぼします。

メリット③:従業員満足度の向上

厚生労働省から女性活躍推進法に基づく評価項目をクリアしている企業には、「えるぼし認定マーク」が付与されます。この評価項目には、男女ともに継続就業しやすい環境への配慮、残業や休日出勤への明確な指標などの文言が含まれています。女性だけではなく全従業員に向けられた指標であるため、会社全体での従業員満足度の向上に繋がるのです。

メリット④:組織の意識改革

女性リーダーが身近で活躍している姿を見れば、他の女性従業員もその人をロールモデルとして自身の目標を立てることができるのです。特に、将来のキャリアを悩んでいる女性従業員にとっては、身近な女性リーダーの働き方を参考に自身のキャリアを描きやすくなります。新たなる女性リーダーの誕生にも良い影響を与えます。

女性リーダーの育成方法

女性リーダー登用はもちろん、リーダーとしての育成・研修を実施する必要があります。ここからは、女性リーダー登用に向けた育成方法を紹介していきます。

★長期目線での育成

★女性が働き続けられる環境作り

★女性リーダー同士のコミュニティ形成

★内閣府による女性役員育成研修

★長期目線での育成

まず、女性リーダーとして活躍してもらうためには、長期的な育成プログラムを準備する必要があります。現時点で女性リーダーのロールモデルが少ないだけではなく、女性リーダー育成のための研修やナレッジが整備されていないことが多いです。このような状況では、リーダーとして必要な知識や経験を蓄積できず、女性リーダーとして成果が出るまで時間がかかってしまうのは仕方のないことです。女性リーダーを育成するのであれば、長期的な育成期間を要するということを前提に、取り組みを始めましょう。

★女性が働き続けられる環境作り

これまで女性リーダーが育成できなかった背景には、出産や育児といったライフイベントによる継続したキャリア形成の難しさが影響していました。女性リーダーを育成するには、この前例を覆す必要があるのです。休暇の取りやすい職場、復帰しやすい職場にすることで、長く働く女性を増やしていくことも重要です。女性が長く就業できるというキャリアの不安を払拭することが、女性リーダーを育成する足掛かりになります。

★女性リーダー同士のコミュニティ形成

さらに女性リーダーや女性社員同士のネットワークを確立することも重要なポイントです。女性リーダーはまだまだ少数です。そのため、社内外で孤立することがないよう人脈の形成を手助けし、相談しやすい環境を作る必要があります。

★内閣府による女性役員育成研修

政府では、第4次男女共同参画基本計画の取り組みの一環として、「女性リーダー育成に向けた諸外国の取組に関する調査研究」を実施。この調査研究を基に、女性役員候補者に必要な素養を習得できる育成プログラムを策定し、女性リーダー育成に向けた研修を開始しました。

研修では、下記のような育成プログラムが実施されました。

■企業経営層による講演
■法律・マネジメント等の専門家からの講義
■アクションプランの作成
■グループワーク・交流会等

女性リーダーになるために必要とされる“知識”と“意識”の習得と、女性リーダー同士のコミュニティ作りを目的としています。

参照:【内閣府】男女共同参画局・女性リーダー育成

歴史から振り返る「多様性社会」への歩み

世界的にSDGsへの取り組みが盛んになり、多様性社会の実現に向けて歩み始めていますが、歴史を振り返ると様々な課題に直面してきました。これからの多様性社会を語る上では、まず過去の実例を理解することから始めましょう。
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フランス革命

時は1789年、フランス革命。
国王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットの処刑により王権国家としての「絶対君主制」が崩壊し、「市民」が権利の主体であるという“フランス人権宣言”が発せられました。これは世界に大きな影響を与え、市民に権利が及んだ初めての出来事でした。しかし、フランス人権宣言における「人」および「市民」とは男性のことを指し、女性は含まれていなかったのです。

明治維新

時を少し遅くして、日本では明治維新。
フランス革命の影響を受け、1874年に自由民権運動が始まりました。この動きの中で、“女性参政権”や“女性解放”を求める女性運動家が、明治政府に対して男女平等を訴えたのです。しかし力及ばず、1889年には男性優位主義に基づいた大日本帝国憲法の発布により、またしても公的な女性の権利は認められませんでした。

女性の権利が認められた「参政権」

このように、歴史を振り返ってみると世界的に男性社会であったことが分かります。そして、初めて女性の権利が公的に認められた制度は、世界史と日本史ともに「参政権」でした。19世紀から20世紀にかけて女性の参政権が認められ、公的な権利を女性が有するきっかけになったのです。

そこから、日本では1960年に日本初の女性大臣が誕生します。中山マサ氏が初めての女性厚生大臣として入閣しました。公的に女性リーダーが誕生した歴史的瞬間と言えます。

多様性社会の実現に向けて

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そして今、我々が実現すべき未来は「多様性社会」です。つまり、男女関係なく全員が個性を最大限に発揮し、活躍の機会が均等に与えられた社会を指します。

そのためには、これまでの男性社会から目を背けることなくしっかりと向き合い、その上でこれからの多様性社会の実現を目指していくべきなのです。政府の掲げる女性管理職30%の目標達成に向けて、日本が一丸となって取り組んでいく必要があります。

とはいえ、長い歴史が作ってきた文化や制度は簡単に変えられるものではありません。多様性社会を目指すということは、人類にとっては未知の領域への挑戦になるわけですから、より一層女性リーダーの育成に力を入れていくべきタイミングでしょう。
今の社会に不足している制度を補う目的として、女性の働き方の見直し、女性リーダーの育成、多様性を受け入れる組織体制を整えていくことが最優先事項です。

男女関係なくリーダーに向いている人材が適切なポジションで活躍する組織が、「多様性社会」で勝ち残る組織と言えるでしょう。男性リーダーと女性リーダーが共存することで組織に進化をもたらすきっかけになるのです。

今回は女性リーダーの特徴と強みを解説し、育成方法を紹介しました。多様性社会の実現に向けて、ぜひ少しずつでも取り組んでみてはいかがでしょうか。

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