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働き方改革で変わり始めた建設業界の労働環境と意識

働き方改革で変わり始めた建設業界の労働環境と意識

ご存じの方も多いと思いますが、日本ではいま、多くの企業が「働き方改革」を進めています。労働時間を短くしたり、リモートワークなどの制度を新設して労働環境を改革したり、女性従業員の活躍を促したりしています。その波が、ついに建設業界にも押し寄せてきています。

人手不足の解消には働き方改革が必要

実はいま、建設業界では、2021年度を目標に、建設現場の「週休二日」を実現させようとしています。逆に言えば、ほとんどの現場が、いまだに週休二日ですらないというのが、建設業界の実情です。建設現場では、それほど長時間労働が当たり前になっています。その証拠に、建設業界の労働時間(171.3時間)は、全産業平均(143.7時間)よりも月30時間近く長いのです(厚生労働省・毎月勤労統計調査 2018年確報)。ゼネコン・サブコンなどの従業員の多くは、一般に比べると、かなり長時間働いています。

しかし、ゼネコンやサブコンも2017年になって、ついに働き方改革を本格的に始めました。週休二日を実現するため、「適正工期の確保」に向けて、関係方面に対して強力な働きかけを行うといった行動を取るようになってきたのです。なかには、一時的な措置として、いまの働き方に慣れている30代後半以降の従業員には従来どおり働いてもらいながら、若手従業員は強制的に残業を減らすといった手を打つ企業も出てきています。また、数年前から、いわゆるスーパーゼネコンを中心にして、多くの建設企業が現場で働く女性総合職社員を少しずつ増やしています。業界の女性活躍推進も、着々と進んでいます。

その背景には、もちろん国の働きかけなどもあるのですが、最も大きな要因は、人手不足と離職率の高さと見てよいでしょう。総務省の労働力調査によれば、1999年には657万人だった建設業の就労者は、2016年には497万人と、500万人を切るところまで減っています。東京オリンピックに向けた建設ラッシュも相まって、いま日本の建設業界は深刻な人手不足に陥っています。さらに、その人手不足が長時間労働に拍車をかけており、あまりの忙しさに嫌気が差して、他業界に転職していく従業員も少なくないと聞きます。また、新卒採用では、学生たちが労働環境を重視して会社を選ぶ時代になってきています。これからの時代、建設業界が十分な働き手を確保するためには、やはり労働時間を減らし、女性や高齢者も含めたさまざまな従業員が活躍できる環境を作る必要があるのです。

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建設業界が抱える3つの人材問題

建築品質・電気工事・空調工事などのスペシャリストを採用するサブコンが増えている

とはいえ、従来のビジネス構造のなかで、労働時間だけを減らすことはほとんど不可能です。そこで各企業とも、先ほども少し触れた適正工期の確保などのビジネス改革に取り組んでいます。なかでも目立つのが、「案件を選ぶゼネコン」が増えてきていることです。そうしたゼネコンでは、たとえば、分譲マンションのように各オーナーの取りまとめが大変で従業員の労働負担が高い案件や、収益率の低い案件を断り、効率的に収益を得られる案件だけを手がけているのです。彼らはそうすることで、売上・利益や従業員の給与をできるだけ下げずに、労働時間だけを少なくしようとしています。ですから今後は、なかなか建設されない案件が増えてくるかもしれません。

また、サブコン(電気工事会社や空調・衛生工事会社など)では、事業領域を広げて、一式で工事を請ける会社が多くなってきています。つまり、電気工事会社は空調・衛生工事も受けられる体制を整え始め、一方の空調・衛生工事会社は、電気工事も受け始めているのです。さらに、大手サブコンのなかには、建設業務にも手を伸ばす企業が出てきています。なぜなら、ゼネコンからの下請け仕事では無理難題を言われることも多く、従業員の負荷がどうしても大きくなってしまう傾向があるからです。働き方改革を進めるために、できるだけゼネコンの下請けから脱したい、そのために幅広い領域で工事を請けたいというのが、サブコンの本音なのです。

そこで、新事業領域の組織を立ち上げるため、経験豊富な40代後半~50代前半の建築品質部門責任者、電気工事部門責任者、空調工事部門責任者などのスペシャリスト人材を採用しているサブコン、あるいは採用しようとしているサブコンが今後も増えていくものと思われます。

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