転職にリスクはつきもの
ヘッドハンティングは、転職活動をしていない人たちに突然声をかけていくもの。そして、「まずは話でも聞いてみようか」とお会いしてくれた候補者のほとんどが下記のような反応をする。
「守るべき家族がいて年収は下げたくない…」
「新しい職場で一から人間関係を築き、評価を得ていく気苦労はどうも…」
「現職で一緒に働く社員たちを裏切るようで…」
しかし、よくよく話を聞いてみると現職での満足度は決して高くない。過去に転職しようかな?と迷った時期はあるものの、上記のようなリスクを考えると二の足を踏んで転職適齢期を逃したという30代後半から40代にかけてのミドル世代は実に多い。また、この世代は会社でも管理職となり、経営者の経営方針を直に聞く機会が増え、部下にその経営方針を伝える立場になっている。ここで現職とのミスマッチに悩んでいるというミドル世代も多い。
“転職にリスクはつきもの”である。20代の頃と違って、30代も後半になり年齢を重ねるに連れて、子供の進学やローンの心配はもとより自身の適応力の低下などで転職への気力はどんどん低下する。加齢に伴い求人数が減るということもあるが、実際に20~30代前半の若い世代の方が転職者数は多いのが事実である。
ヘッドハンティングでリスクが軽減される理由とは?
ところが、『ヘッドハンティング』を通して転職をすると、ミドル世代であっても一般的な転職よりリスクが低いことが分かっている。そのひとつの指標が離職率だが、個人的理由による離職率が一般的に10%程度(厚生労働省:平成24年雇用動向調査結果の概況より)なのに対し、ヘッドハンティングをされた人材が移籍後に離職する率は平均1%以下と極めて低い水準である(当社プロフェッショナルバンク2006年~2013年統計)。
「ヘッドハンティングなんて外資系の人や一部の経営者達の話でしょう?」と思われるかもしれないが、実際は30~40代のミドル層で”普通に頑張ってきた日本人”へのヘッドハンティングは年々増加している。数年前までの中途採用と言えば、組織ピラミッドの補修を目的に年齢や職種で、自社の社風に合う人材をポテンシャルで採用するという趣旨が強かったが、リーマンショック以降、一変した経済環境により経営課題を解決できるスペシャリストを他社から採用する傾向が強まってきた。それに伴い、ターゲットを広げる為に求職者以外からも即戦力の人材を採用したいという企業が年々増えており、現に我々のようなヘッドハンティング会社は、クライアントからの依頼により営業職やエンジニア職などで即戦力となる実績豊富な人材情報を常に収集しようと努めているのである。
それでは何故?ヘッドハンティングでの転職はリスクが低いのだろうか?
その理由には、
1. 経営的課題感を持って企業側からスカウトしている為に選考は行わない
(自社が必要とする専門性を持っているか否かは見極めるが選考ではない)
2.候補者は元々転職意欲が高くないからとことん企業を見極められる
という2つの大きな過程があるからと考えられる。
1. 経営的課題感を持って企業側からスカウトしている為に選考は行わない
まずそもそもの話だが、ヘッドハンティングというものは、企業側から「当社で働く気はないか?」と突然声をかけるわけなので、それで形式的な選考を行うのは礼儀がない。ヘッドハンティングと言いながら面接をするような場合、それはヘッドハンティングではなく普通の選考なので気を付けた方が良い。
さて本題だが、ヘッドハンティングの依頼をする企業のほとんどは、新規事業やシェア拡大などの経営課題を持っている。その課題を解決できる人材であれば、求職者中の有無に関わらず、”すべての労働者”の中から探し出したいというスタンスがある。その為に、ピンポイントで企業の課題解決が出来そうな人材に自ら声をかけていき面会へと案内する。そして、その候補者の経験やスキルと依頼主企業の課題とをすり合わせるいわば”戦略会議”のような場を何度も繰り返す。一般の採用が応募を募り、応募者が年齢やスキルや経験などから企業にふるいにかけられるのとは大きく異なって、実に対等に候補者と求人企業は向き合うことになる。
このように何度も何度も打合せをしたうえで、双方のベクトルが合えば見事採用となるわけだが、候補となった人材は、この過程を通じて入社後に自分の何を活かして、何をすべきかが具体的に分かっているので転職後のリスクは極めて小さいというわけだ。また、この面会は経営者が自ら何度も登場することが多く、特に管理職以上の転職のリスクのひとつとなる「経営者との考え方の不一致」も極力防げることになる。
2.候補者は元々転職意欲が高くないからとことん企業を見極められる
これについては、言葉通りだが、こちらの転職意向に関係なく声をかけられるのがヘッドハンティングなので、当人は転職に迫られていない場合がほとんどだ。だから、案件進行中も焦る必要がなく、冷静に人生の選択肢として「現職でこのまま人生を送ること」と「オファーをくれた他社で人生を送ること」を比較し吟味することができる。その結果、移籍するという結論になるのであれば後悔は少ないはずであり、また、仮に現職とオファー企業を比較した上で現職に留まるという選択をしても、それはそれで、改めて現職の良さを認識させられる良い機会だったと思えるのである。
いかがだろうか?ヘッドハンティングを行う企業の背景や選考過程が表沙汰になることは少ないので、ベールに包まれた感じがするだろうが、実は上記のように選考というよりは”戦略会議”のようなやりとりが行われ、その上でじっくりと現職とオファー企業を比較して転職を決意できるという過程が行われている。そしてその過程こそが「ヘッドハンティングで転職したら低リスクだ」という由縁なのである。
(※この記事はアイティメディア社の「誠ブログ」に寄稿したものです)