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在宅勤務導入でよくある5大トラブルと解決策を解説!~事業者向け~

在宅勤務導入でよくある5大トラブルと解決策を解説!~事業者向け~

新型コロナウイルスの影響で、『在宅勤務』が一気に普及しました。初めて在宅勤務という働き方を導入した企業も多いでしょう。有用性が広く知られるようになった在宅勤務ですが、さまざまな問題が発生している企業も出てきています。

今回は、在宅勤務の導入後に起こりがちなトラブルについて、解決策をご紹介します。

「生産性が落ちた」「仕事中の雰囲気が悪くなった」「トラブルの相談が増えた」という場合は、在宅勤務の導入が上手くいっていない可能性もあります。在宅勤務を導入したがトラブルに悩んでいる、これから在宅勤務を導入したいという企業は、解決・対策にお役立てください。

在宅勤務の導入率

新型コロナウイルスの感染防止のため、在宅勤務を実施する企業が大幅に増加しています。

東京都の統計によると、2020年3月時点の都内のテレワーク導入率は24%と、それほど高くありませんでした。しかし、4月になると、感染者数の増加や非常事態宣言の発布などにより、テレワーク導入率は62.7%まで上昇。その後、2021年3月まで60%前後を維持しています。コロナ禍以前とは一変して、在宅勤務が一般的になりつつあることが伺えます。

一方で、新型コロナウイルスの影響で準備を十分にできないまま在宅勤務を始めた企業も多く、予期していなかったトラブルも多数発生しています。多くは在宅勤務で発生しやすい問題を把握できていないことによる、準備・対策不足が原因です。在宅勤務を成功させるためには、企業や管理者側が特性をしっかりと理解し、対策することが重要となります。

在宅勤務によるトラブル①リモートハラスメントの発生

まず、在宅勤務で残念ながら起こってしまうのが「リモートハラスメント」です。リモートハラスメントは、周りから見えづらく、被害者が被害を訴えにくい状況が問題視されています。企業側は、発生することを前提に、管理者・従業員の状態の把握に務める必要があります。

リモートハラスメント/リモハラとは?

『リモートハラスメント』は、リモートワークで起こるパワハラ・セクハラ・モラハラなどのハラスメントを指します。リモハラと略され、コロナ禍で在宅勤務を導入した多くの企業で発生しています。

在宅勤務は自宅で仕事をするため、従業員のプライベートに管理者が介入しやすい構造を持っていることがおもな原因といえます。また、リモートハラスメントの大きな問題は、在宅勤務で活用されているチャットツールやビデオ通話によって、その他の従業員の目がない場所で被害が発生しやすいという点です。

具体的には、下記のような行為や言動がリモートハラスメントに該当します。

<パワハラ>

・仕事をしているか常時連絡、確認する
・使用中のパソコン画面を定期的に上司に送信させる
・トイレや飲み物の用意など短時間の離席で、サボっていると叱責する
・就業中、常にカメラをオンにした状態にさせて監視する
・業務に不要な作業や、遂行できない量の業務を押し付ける
・残業代を支給しない、申請しないように強要する
・備品や通信環境への手当がなく、自宅の就業環境に難癖をつける …など

<セクハラ>

・プライベートな空間を見せるよう要求する
・2人きりの不要なWeb会議を強要する
・プライベートなメッセージや誘いを何度も送る
・「在宅だからって、化粧してないの?」など化粧について指摘、仕事に不必要な質問をする
・「普段どんな服着てるの?」など服装について指摘や変更の指示、プライベートなファッションを要求する
・「後ろにある写真見してよ!」など、家族や恋人などプライベートな話を要求する …など

<モラハラ>

・全員参加のWeb会議に参加させない、または参加しても存在を無視する
・プライベートな内容を言いふらす
・業務に必要な書類や情報を与えない
・雑用や単純作業など能力に見合わない仕事を強要する
・身体的特徴やプライベートな空間などに対して、攻撃・冷笑・中傷する
・「○○は本当に仕事ができない」など、Web会議で仕事の失敗を言いふらす、恥をかかせる …など

もちろん、上記以外にも該当するリモートハラスメントは、数多く存在します。職務上のポジションや職場内の優位性を利用した嫌がらせ・性的嫌がらせ・精神的な嫌がらせは、すべてリモートハラスメントに該当すると考えてよいでしょう。

解決策:リモハラ事例を周知する

リモートハラスメントの解決策、発生防止のためには、まず「リモハラ事例の周知」を徹底しましょう。

リモートハラスメントはどこの職場でも発生し得る問題です。企業側の目の届かないところでハラスメントが行われているケースや、リモハラしている本人がハラスメントだと自覚していないケースもあります。そのため、「企業側がリモハラを警戒していること」「どのような行為がリモハラに該当するのか」を従業員に認識してもらいましょう。

とくに、上下関係のある場合にハラスメントが起こりやすいため、管理者や先輩社員にはリモハラ防止を徹底させます。新入社員など立場が弱い従業員に対しては、相談できる窓口を周知しておくと良いでしょう。

解決策:在宅勤務時の社内ルールを明確化する

在宅勤務のトラブルは、社内ルールが明確になっていないことが原因のケースが多くあります。そのため、在宅勤務に関する社内ルールを整備して、リモハラが起きにくい環境を作りましょう。

とくに、自宅での就業環境の整備は、早急に取り組みたい課題です。就業環境が整っていれば、少なくとも仕事をする環境へのリモハラは起こりません。

<企業が実施したい就業環境の整備>

・業務用デスク・モニター・通信回線など、就業環境の整備に対する手当の支給
・必要な備品やWi-Fiルーターなど物品の支給
・光熱費や通信費の補助 …など

新型コロナウイルスの感染予防のため、急速な在宅勤務への移行が迫られた企業では、在宅勤務向けの社内ルールが制度化されていないケースが見受けられます。オフィスに出勤していたときとは、仕事の進め方や発生するトラブルが異なるため、在宅勤務向けの社内ルールを整備してください。

解決策:従業員を監視・束縛・強制しすぎない

社内ルールを作るときは、従業員を監視・束縛・強制しすぎないことが重要です。

在宅勤務では、「部下がサボっているのではないか」という疑念から、厳しい管理体制を敷いてしまうケースがよくあります。しかし、過度な管理は、リモハラの発生だけでなく、「プライバシーの侵害で訴えられる」「生産性が下がる」「精神障害を発症する」などのリスクにつながります。

本来、決められた時間サボらず真面目に働くよりも、効率良く短時間で業務を完了させたほうが、生産性は上がります。過度な監視・束縛・強制をして、パソコンの使用時間や着席の有無をチェックしても、仕事の質や成果は測れないのです。そこで、管理者側が従業員の業務の結果を評価できるルールを作りましょう。

ただし、業務の進捗管理は重要なので、コミュニケーションツール・タスク管理ツールなどICTツールの導入がおすすめです。在宅でも快適に勤務できる、かつ業務効率や生産性のアップを目指す体制を整えてください。

在宅勤務によるトラブル②コミュニケーション・連携の不足

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過剰な従業員の管理は問題ですが、在宅勤務ではコミュニケーション不足やチーム内の連携不足によるトラブルも深刻化しています。

在宅勤務は、従業員同士の就業場所が離れているため、リアルタイムでコミュニケーションが取りにくい特性を持っています。企業や管理者は、在宅勤務のマイナス面も理解したうえで、マネジメントする必要があります。

コミュニケーション・連携不足による弊害

在宅勤務では、従業員間のやり取りが、業務に関する報連相のみのやり取りに留まりやすく、意見交換や雑談をする機会は多くありません。また、直接顔を合せられない・文章だけのやり取りになるため、相手の意図や表情が読み取りづらく、不快感や誤解を与えてしまうこともよくあります。

コミュニケーションが不足すると、下記のようなリスクがあり、すべて業務効率や生産性の低下を招きます。

<コミュニケーション不足によるリスク>

・他の従業員・管理者・企業と信頼関係が築けない
・ナレッジの共有ができない
・企業文化が衰退する
・人事評価が偏る
・企業や業務に対する不満・不安や、ストレスの増大

さらに、コロナ禍における在宅勤務では、「1日だれとも会話しない」「実家の家族や友達とも会えず孤立する」「疑問や不安を相談する相手がいない」といった従業員が増えています。孤立や不安といったマイナスな状態は、パフォーマンスの悪化につながるため、企業は従業員同士のコミュニケーションと連携の促進に注力しなければなりません。

解決策:ICTツールを活用する

従業員間のコミュニケーションや連携不足の多くは、『ICTツール』の活用で解決できます。ICTツールとは、情報通信技術を活用して人と人とが通信できるツールです。

具体的には、下記のようなツールがあります。

・コミュニケーションツール

その名の通り、円滑なコミュニケーションを取るためのツールです。コミュニケーションツールには、ビジネスチャットツールやビデオ通話・Web会議ツールなどがあります。

・ファイル共有ツール(オンラインストレージ)

クラウド上にデータを保管でき、従業員間で共有できるツールです。チャットツールでファイルを送付することはできますが、必要なタイミングでの活用には向きません。ファイルの出し入れが簡単にできるため、情報共有や成果物の提出など円滑な業務の遂行に便利です。

・タスク/プロジェクト管理ツール

業務の進捗や、タスクを共有・可視化するツールです。クラウド化されたものを使うことで、組織的にタスクやプロジェクトをこなすことができます。

そのほか、各業務や特定の目的に特化したICTツールが数多くあるため、用途に合わせて複数導入するのがおすすめです。

解決策:コミュニケーションにおけるルールを定める

コミュニケーションの活発化のためには、社内ルールとしてある程度コミュニケーションの取り方について定めておくのがおすすめです。

<コミュニケーションを取るためのルール例>

・朝礼や終礼をWeb会議で行う
・定期的に出社日を設ける
・オンラインイベントや飲み会を開催する
・発信に対する返答や反応の徹底
・チャットでのメールマナーや定型文を廃止する

とくに、部下は上司に対して発言しにくいため、上下関係に左右されないフラットな発言環境を整備しましょう。気軽にコミュニケーションツールを使えるようになれば、業務に関する相談や悩み、業務以外の雑談もしやすくなります。何かあれば、すぐに連絡できる環境づくりを意識しましょう。

解決策:定期的に面談を実施する

オフィスに出社する場合でも、すべての従業員と平等にコミュニケーションを取るのは難しいことです。とくに在宅勤務では、Web上でのコミュニケーションが苦手な人もいるため、定期的な面談を実施して、管理者が各従業員とコミュニケーション・連携を取れる仕組みを作りましょう。

1対1の面談を実施すれば、普段は発信しにくい悩みや意見を聞きやすくなるため、信頼関係を築くことができます。数人単位で面談を行い、チームの結束や方向性を一致させるのも良いでしょう。対面のほうが効果がありますが、ビデオ通話でも十分効果が期待できます。

在宅勤務によるトラブル③労働条件の変更による不満の増大

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従来、出社して勤務していた企業が在宅勤務を導入するにあたり、起こりがちなのが「労働条件のトラブル」です。

現状の労働条件が在宅勤務にマッチしていないケースは、多々見受けられます。なかには、労働基準法違反で、訴訟トラブルになるケースも発生しています。そのため、法律を遵守したうえで、従業員との信頼関係を維持する姿勢が重要です。

急な在宅勤務により労働条件のトラブルが増加

在宅勤務の導入で発生しているトラブルでとくに多いのが、「残業代の未払い」「長時間労働の発生」「就業環境整備にかかる経費の取り扱い」です。

・残業代の未払い

在宅勤務になってから、残業の実態がわからないと、残業代が支払われないケースが発生しています。しかし、在宅勤務であっても、法定労働時間を超えて働いた場合は、企業は従業員に残業代(時間外割増賃金)を支払うことが法律で決められています。みなし残業制度であっても、みなし時間を超えれば残業代の支給が必要です。

・長時間労働の発生

残業代の未払いと同様に、労働時間がきちんと管理されず、長時間労働が深刻化しているケースがあります。プライベートと仕事の境界が曖昧になりやすい在宅勤務では、長時間労働が発生しやすい環境といえます。なかには、残業に抵抗がなく、企業側に隠れてサービス残業をしてしまう従業員も。一方、勤務時間内に終わらない業務を押し付けられて、サービス残業を強いられるケースもあるようです。

・就業環境整備にかかる経費の取り扱い

在宅勤務の導入にあたり、パソコンや文具類など備品の購入費や仕事中の水道光熱費、通信設備費などの費用を、企業と従業員のどちらが負担するかでトラブルになるケースが増えています。労働基準法では、業務に使う用品の出費を従業員に負担させる場合には、就業規則に定めなければならないという規定があります。したがって、これまで企業がオフィスに用意していたもの・経費として支払っていたものは、基本的に企業が負担する必要があります。

解決策:正確な労働時間を把握する

確実な残業代の支給や、長時間労働防止のためには、正確に労働時間を把握しなければなりません。法律を遵守し、社員の生活・健康を守るために、下記のような方法で正しく労働時間を把握しましょう。

<正しい労働時間を把握するための方法>

・クラウド勤怠システムの導入
・勤務時間外のシステムへのアクセス制限 …など

また、労働時間に関して、社内ルールを明確化しておくことも重要です。「残業の申請方法」「長時間労働・サービス残業・休日勤務の禁止」「休憩時間の取り方」などを管理者・従業員に徹底しておきましょう。

解決策:在宅勤務手当または定額の経費を負担する

就業規則で、就業環境の整備にかかる費用が従業員負担となっていない限り、出費は企業側が負担する必要があります。水道光熱費や、プライベートと兼用の通信費などは、どこまで経費にするか線引きが難しいため、定額の在宅勤務手当や経費の支給がおすすめです。購入費に関しては、業務用として区別しやすいため、発生時に経費申請してもらうのが良いでしょう。

線引きが難しい費用に関しては、あらかじめ「どこまで企業が負担するのか」「いくら補助を出すのか」など、明確なルールの設定が重要となります。

お金のトラブルはデリケートで、問題が大きくなりやすいため、書面でルールを周知しましょう。また、就業環境の整備は、パフォーマンスの向上やリモハラ防止につながるため、企業として最低限経費を負担し、働きやすい環境を整えることが必要です。

解決策:場合によっては事業場外みなし労働時間制を採用する

正確な労働時間が把握できないという場合は、『事業場外みなし労働時間制』を採用することで残業代の支払いが不要になるケースがあります。事業場外みなし労働時間制とは、従業員が事業場以外で働いた場合に、労働時間の算定が難しいときは、所定労働時間働いたとみなす制度です。

ただし、以下の条件を満たさなければ、事業場外みなし労働時間制は認められません

<事業場外みなし労働時間制の条件>

・従業員がパソコンやスマホなどの情報通信機器による指示に、即答する義務がない/常時通信可能な状態を指示されていない状態である
・企業や管理者の具体的な指示で業務を行っていない

事業場外みなし労働時間制が適用できる企業や業務であれば、制度を導入することでトラブルを解決できる可能性があります。

解決策:就業規則の修正と労働契約の変更の合意を取る

これまで会社が負担していた業務で使う用品を従業員負担とする場合、就業規則の修正や、労働契約の変更に対する合意が必要となります。反対に、就業規則を修正、労働契約を変更する合意が取れれば、経費を企業側で負担しなくても良いことになります。

労働基準法では、使用者が就業規則の作成・変更をする場合、事業場の労働者の過半数が組織する労働組合、または労働者の過半数の代表者の意見を聴くことが定められています。また、就業規則を従業員に不利益なものにする場合、原則として従業員ごとに個別の同意が必要となります。

経費の取り扱いだけでなく、現在ある就業規則を変更する場合には、同様の対応が必要となるため注意してください。就業規則を変更する場合は、できる限り従業員側の意見を尊重して、従業員との信頼関係を保ちましょう。

在宅勤務によるトラブル④在宅組と出社組の摩擦

一部の従業員に在宅勤務を導入した企業では、在宅で仕事をする従業員と、出社して仕事をする従業員のあいだの関係が悪化しているケースがあります。企業は、在宅組・出社組の双方の意見や不満をくみ取り、それぞれに合わせた調整が求められます。

在宅組と出社組のあいだに生まれる摩擦

在宅勤務の導入では、在宅組と出社組で就業環境に違いがあります。この就業環境による違いから、在宅組・出社組それぞれに不満や不信感が生まれています。

<在宅組の意見>

・公正公平に評価されているか不安
・サボっていると思われていないか不安、またはサボっていると思われたくない
・仕事に集中しにくい自宅での勤務にもかかわらず、出社組に楽そうだと思われる
・仕事に必要な備品や水道光熱費などの自己負担が不公平だと感じる

<出社組の意見>

・在宅組の進捗や行動が分からず、仕事をサボっているのではないかと感じる
・マネジメントや仕事の相談がしにくい
・公正公平に評価されているか疑問
・通勤時間がある分損している気がする、不公平だと感じる
・在宅組よりも負担が大きく不満

在宅組で多い意見は「サボっていると思われていないか不安」。出社組で多い意見は「相談しにくい」「不公平感がある」です。「公正公平な評価がされているか」という人事評価の部分は、お互いに気になるポイントとなっています。

解決策:クラウド化&ペーパーレス化を進める

業務の進捗や状況が可視化できれば、「サボっているかも」「マネジメントしにくい」「相談しにくい」といった不満の多くを解消できます。そこで、業務のクラウド化とペーパーレス化を進めるのがおすすめです。

特に、先に紹介したタスク管理ツールを使えば、業務の進捗や状況を可視化することができます。タスク管理ツールでは、「だれがどのような業務を担当しているのか」「その日にどのようなタスクをこなしたのか」などが共有できるため、他の仕事の割り振りや、業務の相談もスムーズに行えます。

また、情報やファイルのデータ化をはじめ、申請や稟議もすべてペーパーレスにすることで、より多くの業務をクラウド化できるため、円滑に業務を遂行できるようになります。ペーパーレスにすることによって、在宅勤務の対象者を増やせるケースもあります。

クラウド化やペーパーレス化は、在宅組・出社組の就業環境を均一化できる方法なので、積極的に導入したいところです。

解決策:人事評価の基準や方法を統一する

全員出社していたときの人事評価で、本当に公正公平に評価できるのかという疑念は、在宅組・出社組のどちらも持っています。そして、在宅での仕事ぶりを、出社しているときと同様の基準で評価できないことは事実です。そのため、働き方に合わせて、人事評価の基準や方法をあらためて統一しなければなりません。

在宅勤務では、仕事に取り組む姿勢やプロセスなどの定性的な評価は難しくなります。従来の日本企業で評価項目として重要視されてきた、協調性・勤務態度・退勤状況・積極性などを評価項目に入れると在宅組と出社組の差が大きくなってしまいます。

よって、在宅組と出社組の両方に配慮しつつ、下記のようなポイントを盛り込んで自社に合う評価制度を構築してください。

<在宅勤務がある企業に向いている人事評価>

・評価する項目を明確に設定し、共有する
・目標の達成度や役割達成度など目に見える成果で評価する
・完全に成果主義にせず、プロセスを評価する項目を残す
・360度評価など多面的な評価を取り入れる
・MBOやOKRなど目標管理手法を取り入れる
・人事評価システムのビッグデータや人工知能(AI)を活用して公平な評価を盛り込む
・人事評価をクラウド化して、評価項目や現在の評価、フィードバックなどを可視化する

解決策:働き方に合わせてマネジメントを工夫する

在宅組と出社組では、就業環境も不満を抱くポイントも違います。そのため、それぞれの働き方に合わせてマネジメントすることで、従業員全体の満足度を上げることができます。

・在宅組に対して

在宅組は、1人ひとりが個別に業務にあたるため、不安や孤立を感じやすい環境にあります。また、オフィスにいないことで、口頭での情報を拾うことができません。そこで、在宅組・出社組問わず、コミュニケーションや業務の相談・依頼・進行は、基本的にWeb上で行うようにしましょう。Webでのやり取りに抵抗がなくなれば、出社組も在宅組に「サボっている」「相談しづらい」などのマイナスな印象を持ちにくくなります

また、就業環境による不公平感が出ないよう、業務に必要な用品は現物または経費を支給して、在宅組がスムーズに業務できる、かつ出社組の負担を増やさない環境を整えましょう。

・出社組に対して

出社組に対しては、出社したくなるオフィス空間を作ることがポイントとなります。出社組が不満を抱く大きな原因は、「できれば行きたくないのに、行かざるを得ない」という状況です。

企業によっては、どうしても出社が必要な業務もあるため、出社組が進んで行きたくなるような快適なオフィスづくりを目指しましょう。たとえば、「フリーアドレス制で好きな席で仕事ができる」「ソファやリラックススペースでくつろげる」「ペットを連れて出社できる」などの工夫があります。

在宅勤務によるトラブル⑤機密情報の漏洩

在宅勤務に際しては、企業も従業員も予期しないところから、機密情報が漏れてしまう可能性があります。オフィスではハード面でもソフト面でも、セキュリティを万全にしている企業が多いでしょう。一方、従業員の自宅で業務にあたる場合、セキュリティに関する不安が残ります。企業は、在宅勤務でもオフィスと同様のセキュリティを保つ必要があります。

情報が漏洩するルート

在宅勤務であるかに関わらず、下記のようなケースでは情報が漏れる可能性があります

<情報が漏洩するよくあるルート>

・公共のWi-Fiなど脆弱なセキュリティの通信回線を使用する
・プライベート用のパソコンを業務に使用して、ウイルスに感染したり、サイバー攻撃の被害が出たりする
・ノートパソコンをカフェなどで使用して、置き忘れてしまう
・SNSに仕事の情報をアップしてしまい、外部に情報が洩れる …など

オフィスに出社する働き方でも、外出する従業員であれば公共のWi-Fiにつなげてしまったり、置き忘れたりするリスクはあります。ただし、在宅勤務では、企業の目が届きにくい分、リスクが高まるため、より注意が必要です。

解決策:業務で使用するデバイスを指定する

情報漏洩を防ぐためには、パソコンなどデバイスのセキュリティを強化しなければなりません。

業務に使用するパソコンやスマートフォンは、企業側から支給し、セキュリティソフトをインストールして使用すれば、情報漏洩リスクを下げることができます。従業員には、支給したデバイスのみを使用させ、セキュリティが甘いプライベート用のデバイスに情報を残さないよう徹底しましょう。デバイスに入れるセキュリティソフトは、扱う情報の機密性から最適なものを選んでください。

また、パソコンのセキュリティ対策はしっかりしているという企業は多いですが、スマートフォンのセキュリティは手薄になりがちです。スマートフォンで情報をやり取りする可能性がある場合は、スマートフォンにもセキュリティソフトをインストールしておきましょう。

解決策:ネットリテラシー・SNSリテラシー教育を行う

従業員のなかには、ネットリテラシー・SNSリテラシーが低い人もいる可能性が十分あります。そのため、従業員にはネットリテラシー・SNSリテラシー教育を行って、情報漏洩に対する危機感を持ってもらいましょう。

従業員が何気なくブログやSNSに載せた写真に顧客情報や個人情報が写り込んでいれば、機密情報は簡単に漏れてしまいます。匿名の投稿でも、普段の投稿から住んでいるエリア、使用している駅、勤務している会社名など、さまざまな情報を読み取ることができます。

インターネットが普及して久しくなりましたが、まだまだネットリテラシーについて教育を受けたことがある人は少ないものです。在宅勤務の導入を機に、インターネットやSNSの使い方を指導しましょう。

在宅勤務を成功させる!トラブルを防止する3つのポイント

トラブルのイメージ

ここまで、在宅勤務で実際に起こっているトラブルと、その解決策について解説してきました。在宅勤務は、正しく導入できれば、業務効率や生産性のアップが期待できます。また、人材確保が難しくなるなか、在宅勤務という働き方を採用しているだけで、優秀な人材を雇用できるチャンスが広がります。

そこで、最後は、在宅勤務によるトラブルを起こさず、メリットを享受するために、押さえておきたいポイントを紹介します。

管理者側の理解を深める

じつは、在宅勤務で理解を得にくいのが、従業員より管理者側です。だからこそ、在宅勤務を成功させるために、まず管理者側の在宅勤務に対する理解を深める必要があります。

管理者は比較的年齢が高い人が就いていることもあり、「出社して当然」「在宅勤務はやむを得ない妥協策」「在宅勤務は特別な事情がある人向け」とマイナスに捉えている人が多くいます。一方で、従業員側は、「在宅勤務は働きやすい」「ワークライフバランスが取りやすい」とポジティブに捉える傾向があります。在宅勤務に対する認識の違いから、管理者と従業員のあいだに距離ができてしまい、働きづらさの原因となってしまいます。また、マイナスな印象を抱いている制度下で業務に追われたり、部下の業務の進捗状況が見えなかったりすると、リモートハラスメントにつながりかねません。

在宅勤務をより良いものにするために、管理者に在宅勤務の魅力を理解、納得してもらったうえで、導入後の課題やポジティブな改善策を発信してもらいましょう。

家族の協力・了解を得る

在宅勤務が続くと、問題となるのが、従業員とその家族との関係です。自宅にいることから、「家族から家事や育児を頼まれる」「邪魔者扱いされる」などの悩みを抱える従業員が増えています。出社勤務から在宅勤務に移行した場合は、家族に協力をお願いして、了解を得ることが重要です。

しかし、家族にも生活があり、従業員の在宅勤務によって、家族が犠牲にならないよう配慮することも重要です。在宅勤務が原因で、家族と険悪になる事例も多数発生しています。家族がいない部屋に就業環境を整備する費用を支給したり、在宅勤務の日数を制限したり、企業もできるだけ従業員の家族に負担をかけないよう配慮しましょう。

従業員の心身の健康に配慮する

長期の在宅勤務によって、従業員の心身に影響が出始めています。企業側は、在宅勤務では健康リスクが上がることを理解し、従業員の健康管理の強化を図りましょう。

・身体の健康

在宅勤務では通勤がなくなり、運動量が減少します。通勤がなくなるだけで、平均歩数が8割減少するというデータもあります。さらに、ついつい家にある食べ物をつまんでしまい、体重が増える人も増加。

運動不足は死亡リスクの第3位に入るほど深刻な問題です。従業員任せにするのではなく、産業医に体調を相談できる仕組みを作ったり、朝礼でラジオ体操を実施したりと、企業主導で健康意識を高める工夫が求められます。

・精神の健康

身体の健康よりも早く、顕著な影響が出ているのが、精神的な健康被害です。ワンルームで暮らす1人暮らしの従業員が、毎日家に籠り、だれとも会うことなく業務をこなすなかで、気分転換もできず精神を病んでしまう事例が発生しています。家族と暮らしていても、在宅勤務が原因で家族と喧嘩になったり、不仲になったりして、精神が擦り減るケースは珍しくありません。

オンラインでイベントや飲み会を開催したり、従業員が気軽に相談できる窓口を設置したりと、メンタルケアにも配慮しましょう。

まとめ

新型コロナウイルスの影響から、一気に普及した在宅勤務。働き方改革や人材確保の面でも有用性が高い働き方ですが、準備不足や間違った対策によってトラブルも発生しています。しかし、トラブルの大半は、企業や管理者が在宅勤務の特性を理解しておけば解決できます。

現在、在宅勤務による悩みを抱えている企業は、今回紹介した内容を参考に、ぜひ解決策を実施してみてください。これから在宅勤務を導入する企業は、トラブルが発生しないよう、しっかりと準備を進めましょう。

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