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プロパー社員とは?企業によって異なる4つの意味を解説!中途社員・出向社員との共存の秘訣も紹介

プロパー社員とは?企業によって異なる4つの意味を解説!中途社員・出向社員との共存の秘訣も紹介

昔からよく使われ、単語としては馴染みのある「プロパー社員」という言葉。しかし、プロパー社員という言葉には複数の意味が隠されているのです。今いる会社での意味と、友人に聞いたプロパー社員の意味がもしかしたら違うかもしれません。また、プロパー社員とそれ以外の社員には、どのような違いがあるのでしょうか。

今回は「プロパー社員」の意味と特徴を明確にお伝えしたうえで、多様な社員同士が共存し合う魅力的な会社の在り方を解説していきます。3大経営資源と言われるヒト・モノ・カネの中でも、「ヒト」にフォーカスした内容です。

プロパー社員とは?

プロパー社員という言葉の意味は企業によって異なります。英語でproperは“正規の” “適切な” “特有の”という意味を持ち、主に「生え抜き社員」「正社員」「自社社員」「元請け社員」と置き換えることが出来ます。

区別すべきプロパー社員の意味

では、プロパー社員の反対語にあたる〇〇社員とは、どのような社員でしょうか。企業によって異なるプロパー社員の4つの意味を詳しく解説していきます。

生え抜き社員 ~中途社員との違い~

「生え抜き社員」としての意味を持つプロパー社員の反対語は、中途社員です。
中途社員とは入社歴の区別として使われます。生え抜き社員は新卒から一貫して同じ会社で勤務していることもあり、その会社でしか磨けない叩き上げのスキルを武器に仕事に取り組んでいます。また、年功序列の評価制度が根強く残る日本企業では、成果とは別の観点で賃金に影響が出ることもあります。

正社員 ~有期雇用社員との違い~

「正社員」としての意味を持つプロパー社員の反対語は、有期雇用社員です。
有期雇用社員とは、たとえば契約社員や派遣社員のことを指し、雇用形態の区別として使われます。仕事内容・勤務時間・労働条件に違いがあり、福利厚生もプロパー社員とは異なるケースがあります。

自社社員 ~出向社員との違い~

「自社社員」としての意味を持つプロパー社員の反対語は、出向社員です。
協力会社から出向してきた社員との所属先の区別として使われます。やはり会社の最終決定権や業務に関する指示監督責任はプロパー社員が担うことが多く、裁量に大きな違いがあると言えます。

元請け社員 ~外注社員との違い~

「元請け社員」としての意味を持つプロパー社員の反対語は、外注社員です。
主にIT業界におけるシステム開発工程の区別として使われます。システム開発工程では、発注者から最初に引き受ける業者があり、その業者が更に外注していくという工程(発注者→元請け→下請け→孫請け)を経て開発します。中でも、元請けとして発注者側から直接依頼を受ける会社の社員のことをプロパー社員と呼びます。発注者との調整や外注側への指示監督責任はプロパー社員の役割であり、業務の立場に違いがあると言っていいでしょう。

プロパー社員の特徴

社員同士の区別に必要な4つのプロパー社員の意味を紹介してきました。企業は入社歴や雇用形態、所属先、開発工程によって社員を区別する必要があるため、意図的にプロパー社員の意味を定義しているのです。一般的にプロパー社員という言葉は、会社内における社員の区別として使われるため、「生え抜き社員」「正社員」「自社社員」という意味で使われることが多いです。そしてプロパー社員には良くも悪くも特徴があります。

■会社への帰属意識が高い

■保守的な考え方でチャレンジに消極的

■社内の人脈が豊富

■給与・昇進が優遇されやすい

■会社への帰属意識が高い

新卒で入社した会社で就業する生え抜き社員には、高い帰属意識が芽生えます。一人前の社会人になるべく育ててもらったこと、他の会社を知らずに自社での働き方を熟知していることから、勤続年数が長くなるほど愛社精神が強くなる傾向があるのです。

新卒で選んだ会社ですから、事業内容やMVV(Mission・Vision・Value)への共感はもともと強く、更に研修時に叩き込まれた知識が加わり、会社を良く知る存在に育っていくのです。

■保守的な考え方でチャレンジに消極的

他の会社を知らずに自社で働き続けていることは帰属意識が高まる一方で、保守的な考え方に陥ってしまうこともあります。

プロパー社員は、上司の意見に従属的な人が多い傾向にあります。一見すると、指示に従う良い社員に見られますが、指示通りにしか動けない社員にも育ってしまい企業にイノベーションを与える存在になれないという課題もあります。前例のないことには取り組めない。その結果、時代の変化や顧客ニーズに対応できずに、競争力を低下させる原因を作ってしまうのです。

■社内の人脈が豊富

新卒で入社した会社には、新卒同期の仲間や元上司・先輩が各部門に所属していることが多く、部門横断での協力を得られやすいという特徴があります。

一方で、同期や先輩と長い間仕事を共にすることによる過剰な仲間意識は、健全な組織運営を害する派閥を作る原因になってしまいます。この派閥は、中途社員にとっては馴染みにくい環境であり、人間関係の悩みから離職率の増加につながる可能性もあります。

■給与・昇進が優遇されやすい

日本では、昔からの名残で“年功序列”の評価制度を取り入れている企業が多く、勤続年数が待遇に影響することがあります。その場合、中途採用で入社した社会人歴5年目の社員と比べて、同じ社会人歴5年目のプロパー社員の方が、給与が高くなる傾向があります。中途社員からすると、これまでの経験によって得られた知識を評価されていないという不満につながり、年功序列で評価されやすい傾向にあるプロパー社員との人間関係に悪影響を及ぼしてしまいます。

ここまでの特徴は、中途社員にはない、中途社員にはある、というスタンスではなく、プロパー社員の方がより顕著に現れる特徴として紹介しています。

社員間で起きやすいトラブル3選

プロパー社員の有する特徴が原因で社員間のトラブルを引き起きてしまうこともあります。トラブルが起きないための企業の取り組みは後述しますが、まずは社員間でどのようなトラブルが起きる可能性があるのかを把握しておく必要があるでしょう。本章では、社員間で起きやすいトラブル事例を紹介していきます。
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事例①:プロパー社員同士のコミュニティによる社員の混乱

中途社員や出向社員の精神的な悩みや業務上の支障を会社側が把握しにくい原因としてインフォーマルネットワークが大きく影響しています。インフォーマルとは非公式という意味です。組織図で表される公式な組織構成の反対語として、インフォーマルネットワークは“非公式な繋がり”を表しています。つまり、部門を超えて交流がある同期やかつての上司と部下との人間関係の繋がりを意味します。

このインフォーマルネットワークがあると、プロパー社員は中途社員や出向社員が持ちえない情報網を使って業務を進めるため、中途社員や出向社員は閉鎖的な雰囲気や疎外感を感じてしまいます。また、組織図上にはない指揮命令系統や意思決定ルートがあると、中途社員や出向社員は誰に何を聞けば良いのかわからず、混乱の原因となってしまいます。

事例②:不平等な評価制度による社員の不満

諸外国が取り入れる実力社会に比べ、日本では昔ながらの“年功序列”による評価が根強く、企業によっては給与や昇進の基準が勤続年数を重視して設定されることもあります。中途社員とプロパー社員が同じ成果を出した場合に、プロパー社員が高く評価され昇進が早かったりすると、中途社員は不満を抱きます。不満から生じる怒りの矛先は、会社にとどまらずプロパー社員にまで及ぶこともあり、社員間に摩擦が生じる原因になってしまいます。

事例③:親会社と子会社の人間関係による社員の差別

親会社と子会社の人間関係は、プロパー社員と出向社員の立場の違いから生じる問題です。会社の最終決定権や業務に関する指示監督責任はプロパー社員が担うことが多いと前述しましたが、それは外部の協力会社や関係会社に限った話です。親会社と子会社という関係性で親会社からの出向の場合は、そうとも限らない事例もあります。

分かりやすい事例として、銀行と証券会社の関係で解説します。
2020年に最高視聴率44.1%を記録したドラマ「半沢直樹」でも、銀行からの出向社員と証券会社のプロパー社員の関係性が描かれていました。
東京中央銀行が所属元である伊佐山氏が、証券営業部の部長として子会社である東京セントラル証券へ出向していた際に証券会社のプロパー社員に放った「おいっ!プロパー!」という一言。ここには、親会社からの出向社員としての立場の強さと子会社のプロパー社員である立場の弱さが顕著に表現されたシーンであったと言えます。
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このシーンにおける伊佐山部長は、明らかにプロパー社員と出向社員を「区別」ではなく「差別」しているような言い方です。親会社である銀行からの出向社員は、経験を積みに子会社へやってきたエリート社員や天下りで役職と賃金が保障された社員などが多く、待遇面で大きくプロパー社員が引けを取ることになります。

親会社と子会社の関係では、伊佐山部長から見た“エリート”である親会社からの出向社員と“使えない”子会社のプロパー社員という関係性が出来てしまっている現実にも目を向けなくてはなりません。プロパー社員は本当に優秀ではないのか?が論点ではなく、このような先入観や組織文化が根付いてしまっていることが問題なのです。

親会社と子会社という関連があるにも関わらず、プロパー社員からしてみれば、出向社員が敵に見えてしまう事もあるのでしょう。

そして上記3つの事例は、結果的に離職率の増加に繋がってしまいます。多様性が求められる時代で、様々な社員が個性を発揮して活躍できる組織にするには、企業はどのような取り組みをするべきでしょうか。

プロパー社員と中途社員が共存するために

社員間の問題は、社員たち自身で解決することが難しいケースがほとんどです。そのため、会社側がプロパー社員と中途社員・出向社員の間に生じるギャップを理解し、中途社員・出向社員に配慮することが重要となります。

プロパー社員の持つ特徴を理解したうえで、良い点は中途社員と共有し、足りない点は社員同士で補完し合いながら良い組織を作っていくのが理想でしょう。
その理想に近づくために、企業が実施すべき4つの取り組みを紹介します。

①評価制度を統一する

②社員のベクトルを合わせる

③中途社員による勉強会を実施する

④社員同士の交流機会を増やす

①評価制度を統一する

まず取り組むべきは、評価制度の統一です。社員が保有する能力や期待役割に応じた明確な評価基準を設定する必要があります。これにより、勤続年数に関係なく中途社員の入社時点での階級や給与を適切に評価できるようになります。そして、全社員が平等な評価制度のもとで業務に取り組める環境が整い、社員間の健全な競争と協力を促進できるのです。

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②社員のベクトルを合わせる

次に、社員のベクトルを合わせることが重要です。ビジネスシーンにおけるベクトルとは、考え方の方向性を意味します。社員同士が同じ目標に向かって業務に取り組まないと、社員間の溝は深まるばかりです。異なる課題を自己流で解決に導くのではなく、同じ課題を協力して解決させることで、社員間の信頼関係を築くことが出来ます。少人数のプロジェクトを組成し、多様な人材をアサインして業務に取り組んでもらうことも有効な手段です。

③中途社員による勉強会を実施する

さらに、中途社員による勉強会を実施することは非常に有効です。プロパー社員の方が会社についてよく知っているからと言って、中途社員が受け身の姿勢でいる必要はありません。しかし、中途社員は覚えることが多く、ついつい受け身になりがちです。

そこで、中途社員の得意分野を発信してもらう機会を設けると良いでしょう。前職での経験や取得している資格の知識などをアウトプットする機会は中途社員の自信にも繋がり、自分を知ってもらう良いきっかけになります。

このような機会を設けると、中途社員の心理的安全性は高まり社員間のコミュニケーションの活性化にも良い影響を及ぼします。プロパー社員は自社のことはよく知っている反面、他の会社を経験しておらず世間知らずな一面もあります。そこで、中途社員はこれまでの豊富な経験を共有し、プロパー社員は自社のノウハウを共有することで、お互いにとって刺激し合える関係性が構築できるのです。
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④社員同士の交流の機会を増やす

仕事は1人では完結しません。時には、部署の垣根を超えて協力を必要とする場面もあるでしょう。そのため、社員同士の交流の場は業務においても必要不可欠です。人と人との交流を増やすには、物理的な距離を縮めるところから始めてみると良いでしょう。例えば、オフィスをフリーアドレスにして他部署の社員の隣りで働ける環境を提供したり、休憩室やラウンジという仕事とは一線を置いたカジュアルな環境を作ってみたり、企業が交流の場を増やすことが中途社員のモチベーションを向上させます。また、業務外の交流として同好会を作ったりするのも良いでしょう。

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まとめ

これまで築いてきた企業の伝統や文化には、良い点もあれば改善すべき点もあります。とはいえ、長い歴史の中で醸成されてきたものを覆すには中長期的な目線での改革が必要です。企業は人なり。パナソニック創業者の松下幸之助氏の言葉をお借りしますが、今回はヒトにフォーカスして企業の成長を担う社員の在り方について解説してきました。

耳障りな話ほど、早急に対処しないと取り返しのつかないトラブルに発展してしまいます。今回のコラムが、今後の組織改善の一翼を担うヒントとしてお役に立てば嬉しく思います。

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