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中間管理職の役割―今後のミドルマネジメントについて考える―

中間管理職の役割―今後のミドルマネジメントについて考える―

かつては「中間管理職」という名称で呼ばれた「ミドルマネージャー」は、組織の要となる重要なポジションであり、その能力は組織の成果までも左右します。優秀な人材が不足している中で、ミドルマネジメントはどうあるべきか、どのような能力が必要なのか考えてみましょう。

ミドル層こそ組織を支える屋台骨

ミドルマネージャーは、組織の中でも重要度の高いポジションといえます。理由は、ミドルマネージャーが組織の上下を結び付ける役割を負っているからです。
企業の方針や意思は経営陣が決定しますが、その方針を理解して現場に周知し、目標達成に向かって現場を動かすのはミドルマネージャーの役割です。その一方で、ミドルマネージャーは現場を把握しているので、現場の状況を分析して経営陣に正確に伝えるという役割も負います。
つまり、組織の上下をつなぎ、コミュニケーションの橋渡しをし、組織の意思決定を円滑に進めるというのがミドルマネージャーの重要な役割です。
ほかにも、適切な業務管理によって目標達成力を高めて成果につなげることや、OJTなどで部下の育成をすることも業務とされています。会社によっては健康管理までカバーしますので、実に多彩な役割を負っているのです。

ミドルマネージャーに必要なものは

当然ながら、ミドルマネージャーに必要な能力は多岐にわたりますが、おおよそ下記の4つに分類できます。

1. 情報関連能力 (※情報関連能力⇒「情報収集・分析能力」へ変更)
担当部署及びその周辺の、情報収集・分析能力し、です。経営陣の意思を周知させたり、現場からの情報を経営陣に伝達したりすることも含まれます。

2. 業務遂行能力
業務を適確に管理・把握して、目標達成力を高め、成果を出す能力です。

3. コミュニケーション能力
部下の性格や長所・短所に合わせた指導、仕事への動機付け、人間関係によるトラブルの解決には欠かせない能力です。

4. コンプライアンスの理解と遵守
業務に関わる関連法規についての正確な知識を持ち、遵守することは必須です。

これらは、マネージャースキルとして基礎的なものです。しかし、近年ではミドルマネージャー自身もプレーヤーとして実務に携わるというケースが増えています。また、業務が複雑化するに伴い、他部署との連携や調整を行うなど、横方向への動きが必要になるケースも多く、ミドルマネージャーに要求される能力は増加傾向にあるといえます。

ミドルマネージャーに新たに求められる能力とは

ヘッドハンターとして多くの人事担当者、あるいは経営者の方々と接してみると、彼らがミドルマネージャーをどう評価して、何を求めているのかがよくわかります。
それを象徴するデータがありますのでご紹介しましょう。2012年に経団連が公開した報告書「ミドルマネジャーをめぐる現状課題と求められる対応」です。
この報告書にある「経営トップのミドルマネジャーの働きぶりについての満足度」を見ると、「やや満足(40%)」「かなり満足(32%)」と、7割以上の経営者はミドルマネージャーの能力に満足しています。重要度の高いマネージャーの仕事としては、「需要度の高いミドルマネジャーの役割」が参考になります。そこでは、経営者たちがミドルマネージャーだった時代と異なり、「経営環境の変化を踏まえた新しい事業やしくみをみずから企画する」ことや「部下の将来を見据えて必要な指導・育成をする」ことが、現在ミドルマネージャーが対応すべき重要課題だと位置付けています。しかし、「ミドルマネジャーにとって特に重要な役割と達成できていない役割」では、その2点においてミドルマネージャーが役割を果たせていないという結果が出ています。
ミドルマネージャーへの要求は、ますます高まるばかりのようです。

「目の前の仕事で精一杯」と悲鳴をあげるミドル層

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報告書「ミドルマネジャーをめぐる現状課題と求められる対応」では、ミドルマネージャーがその役目を果たせていない、あるいは果たしにくいという要因として、次の5つを挙げています。

・経営環境の変化による、ビジネスの複雑化、高度化
・組織構造の変化によるフラット化で、OJTによる育成業務が困難
・雇用形態の割合が変化した上、働き方に対する意識が多様化した
・短期的な業績・結果志向の強まりによる、失敗を許容しない雰囲気
・個人情報の管理やコンプライアンス等、管理実務の増大

ビジネスのしくみは複雑になり、フラットな組織になって管理職1人あたりの部下が増え、部下の就業時間やコンプライアンスに留意しながら、短期的な成果を目指す。その上で、自分自身もプレーヤーとして動かなくてはならない。これでは、「これ以上、とても手が回らない」というのが、ミドルマネージャーの本音でしょう。
では、企業はどう対応すれば良いのでしょうか?

課題解決のために、企業ができる方策とは

まずは、ミドルマネージャーが抱えている業務負荷を軽くしなくてはなりません。そのための施策として、報告書ではいくつかの対応策を挙げています。

・実務的負担を軽減し、マネジメントや部下指導・育成に取り組める状況を整備
・より良いマネジメントの実践を可能とするために必要なOJTへの制度的支援
・ミドルマネージャーの自律的な成長を支援するためのOFF-JT(職場外での教育訓練)の強化
・ミドルマネージャーのやる気や意欲を高める精神的な支援

いずれも、ミドルマネージャーが存分に実力を発揮するためには必要なもので、これを基準にして具体的な対応策を実施すればいいでしょう。すべて実行できれば万全に近付くでしょうが、すべての対策を実現できるかというと難しいかもしれません。そこで、解決すべき課題の優先度や、対象となる人材の特性を考慮しながら、対応策を絞っていくことになります。

個人の状況に合わせた対策で、効率的な支援を

ヘッドハンターの視点から見ると、組織の人材は実に多彩です。ミドルマネージャーもしかりで、調整能力に長けた人、目標達成力が高い人、企画発想力に優れた人など、さまざまです。
また、彼らは一人ひとり「自分は何をしたいか」「どうなりたいか」という指向性も異なります。そして、程度の差こそあれ、その指向性には強い意志が備わっています。
ですから、企業としてミドルマネージャーの活性化を図り、さらなる活躍を期待するならば、組織の現状とともに、個人の状況や特性を把握し、それに沿うポジションを用意することです。組織の要であるミドルマネージャーが、水を得た魚のように伸び伸びと泳ぎ出せば、組織全体の効率化、活性化にもつながっていくはずです。

 

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