業界ねた

投資ファンドが期待する『プロ経営者』の資質

投資ファンドが期待する『プロ経営者』の資質

投資ファンドによる企業の経営経験のある人材のマーケットが大きく広がっている。全国の企業における経営者の年齢が70代以上の企業は2011年は19.38%だったが、2016年には24.12%と4.74ポイント上昇している。また、後継者不足等による休廃業・解散は2016年の休廃業・解散は過去最多の2万9,583件を記録している。
※東京商工リサーチ調べ

このような後継者不足を課題とする企業に対して、投資ファンドが事業を承継するモデルが拡大している。

日本におけるプロ経営者の実態

だから、プロ経営者はだめなんだ。日本にはプロ経営者は定着しない。プロ経営者という言葉は、2000年代以降、一気に我が国に定着した。プロ経営者をヘッドハンティングしたいという依頼も大幅に増加した。しかし、昨今のプロ経営者の解任は、プロ経営者が日本に根付くかどうか私たちへの問いかけとなっている。

プロ経営者とは、複数の会社を経営者として渡り歩く人物のこと。関連書籍も多く発行され、プロ経営者を目指して、MBAに通う人も増えた。しかし、ここ数年、これらプロ経営者の解任が続いている。

急激な改革を行ったため社員の心が離れてしまった赤字額を増加させてしまった。想定外のこともあったとは思うが、鳴り物入りで請われて経営を担う立場として考えると、社内外から厳しい目で直近の実績を判断されることは仕方がない。

プロ経営者は本当に必要だったのだろうか。

プロ経営者に対する期待が変わってきた。これまでは、プロ経営者を招聘したいと表では言っているものの、裏の想いとしては変革後も、そのまま自社に残り経営にタッチしてほしいとの期待が依頼者側にみられるケースが多かった。そのため、依頼者側からは、自社の組織風土とマッチングした人材かどうか人物面を見極めてほしいという声が強かった。

しかし、昨今目立ってきたのは、変革期に面した自社に対し、短期リリーフでもよいので企業経営を見てほしいという依頼者側のニーズだ。場合によっては、改革を一気に進めることができる人物であれば自社の組織風土とマッチングしていなくても採用したいという声もある。

今の企業フェーズだからこそ、外部から経営者を招聘する必要があるただし、改革が落ち着いたら、もともとの経営体制に戻したい。

後継者不足に悩む企業の本音として、プロ経営者に長く経営に従事して欲しいものではない。変革期にある今だからこそ、経営を助けてほしい、しかし、ゆくゆくは創業家の一族、もしくは地域に縁がある方に経営を任せたい、そのような声も聞こえてくる。『プロ経営者』にとっては、ある意味で割り切った採用ニーズだ。

変化するプロ経営者へのニーズ

欧米においては、すでに転職市場が形成されており、要件さえ満たせば、他社から優秀人材を迎え入れて、結果が出なければ別の会社で活躍してもらうということに社会的な耐性がある。一方、中途採用者が増えてきたとはいえ、まだまだ新卒採用が主流となり、新卒で入社した会社に奉仕を続けるという文化が根付いている我が国においては、企業の成長フェーズごとに必要な人材が変わってくるということへの理解が進んでいなかった。

しかし、昨今の『プロ経営者』に対するニーズの変化は、欧米に近づいている。
今の成長フェーズにあった人材を優先したいというものだ。

逆に採用された『プロ経営者』の評価は短期的なものであってはならない。例えば、変革期にある企業は、ある局面においては自社の負の部分を瞬間的に全て出し切ることも求められる。

ましてや、短期リリーフとして期待された立場の人間であれば、もともとの期待が何だったかを考えてみる必要もある。

『プロ経営者』が経営を担っていた時代はネガティブな側面もあった。しかし、だからこその今の成長フェーズに自社は進むことが出来た。

短期的なリリーフというと、心理的な抵抗がある人も多い。一方で、『プロ経営者』に期待するニーズは変わってきており、また、『プロ経営者』に対する評価については、これまでと別の見方が求められている。

短期リリーフとしての『プロ経営者』のニーズは現在増えている。今後も、この傾向は増加していくものと思われる。

こんな記事も読まれています