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転換を迫られる化粧品業界の人材事情

転換を迫られる化粧品業界の人材事情

少子化による絶対的な市場縮小が続く日本では、多くの業種で方向転換が余儀なくされています。化粧品業界もそのひとつで、年々縮小する国内市場への対応と海外への展開を見据えて、求められる人材のスキルも変化しています。

伸びを見込めない国内の化粧品市場

外食産業などと同様に、化粧品業界は景気動向による売上への影響が大きい分野とされています。そのため、リーマンショック直後は大きな落ち込みを経験しました。しかし、リーマンショック直後の落ち込みから回復したあとも、業界全体の売上高は2009年あたりから頭打ちで、ほぼ横ばいで推移しています。
株式会社矢野経済研究所の「国内の化粧品の市場規模推移と予測」によれば、2011年に227億1,000万円だった市場規模が、5年後の2016年になっても、245億円までしか伸びないと予測しています。最終的な結果は出ておりませんが、予測値を大幅に超えることはないでしょう。

伸び悩みの原因は、単に「景気回復がままならない」というだけではありません。そもそも少子化によって市場全体が縮小していますし、消費者の意識も大きく変化しているのです。

化粧品業界を覆うマイナス要素

化粧品業界の問題は少子化だけではありません。現在の化粧品業界の国内市場は楽観できるものではなく、その要因はさまざまですが、おもな要因としては以下の2つが挙げられます。

【低価格・高機能商品の需要】
女性にとって、化粧品は毎日使う消費財です。景気動向が振るわない状況では、やはり低価格の物に目が向いてしまいます。その一方で、必要な機能を妥協することはできません。崩れにくいファンデーションや簡単に落とせるマスカラ。基礎化粧品であれば、保湿や美白といった機能性は、消費者にとって価格以上に重要でしょう。
つまり、「良い物」というだけではなく、「安くて良い物」を切実に求めているのです。

【コンビニコスメの増加】
「安くて良い物」が求められる結果のひとつとして、コンビニで販売されている1,000円前後の商品の売れ行きが、好調ということが挙げられます。そのこと自体は業界にとってプラスなのですが、それまで2,000〜3,000円台の商品を使っていたユーザーまでが低価格帯に流れており、全体として見るとマイナス方向に向かっているようです。

以上の2項目に加え、異業種からの参入が増えたことが挙げられます。異業種からの参入は計画されたものではなく、富士フイルムであれば写真の色あせ防止に役立つ抗酸化技術を応用したものですし、味の素はアミノ酸を使った化粧品を開発しています。つまり、本業の研究開発から生まれた技術を応用しているに過ぎません。
ただでさえ、縮小傾向の市場に強力なライバルが出現していることで、業界内での競争は激しさを増すばかりです。

旅行者への販売増が売上を押し上げた!

こうした状況にあって、化粧品業界が目指しているのは海外での展開です。例えば、記事の冒頭で紹介した、株式会社矢野経済研究所の「国内の化粧品の市場規模推移と予測」では、直近の数字が若干ではありますが伸びています。これは、2014年秋に改定された「外国人旅行者向け消費税免税制度」によって、化粧品も免税対象に加えられたことが大きく作用しているものと見られています。
中国人観光客の「爆買い」は広く知られていますが、その対象は紙おむつや炊飯器だけにとどまりません。秋葉原や新宿、大阪の心斎橋周辺では、化粧品も彼らの興味の対象になっています。
実は、中国では元々「日常的に化粧をする」という習慣は、一般的ではありませんでした。ですが、近年の経済発展に伴い、化粧品に対するニーズが高まってきたのです。そうした状況下で注目されたのが、日本の製品群です。日本の化粧品は、肌質が似ている中国人にも適しているとされていますし、「美白」という概念も、アジアならではの特徴的な価値観です。結果として、日本の化粧品が受け入れられ、売上に貢献することになったのです。

中国をはじめとする海外市場への進出

中国人観光客による消費増加に伴い、日本メーカーの中国進出が加速しました。
国内最大手の化粧品メーカー・資生堂は、2014年の社長交代を機に、その後の経営指針である「VISION 2020」を発表しました。この計画では、2017年度までは社内の構造改革など「守りの改革」を進め、2018年度から「本格的な攻めに転じる」としています。
この「攻め」の成否を左右するのが、グローバル事業です。資生堂は日本国内トップの売上を誇るだけでなく、海外においても順調に売上を伸ばしています。その規模は他社を大きく引き離し、海外売上の比率は2015年で60%を超える水準です。海外売上の多くは中国が占めていますので、中国市場をどのように攻略するかが、今後の業績を左右するといっても過言ではないでしょう。

これは、資生堂だけに限った話ではありません。化粧品業界にとっては、国内市場はすでに頭打ちであり、本格的な景気回復がやってこない限り、今以上の拡大は見込めません。そのため、中国をはじめとした海外市場に、活路を見出そうとしているのです。

これから求められるグローバル人材

海外市場での売上を増加していくとなれば、その戦略を実践し、成功に導く人材が必要になります。
海外で売れる商品を生み出し、販売し、利益を上げる。この一連の流れをスムーズに進めるためには、日本国内の常識にとらわれない感覚を持つ人材が必要不可欠です。それは、化粧品業界でも例外ではありません。
「現地の人々が何を求めているのか」「どのような製品なら受け入れられるのか」「どのような見せ方や売り方が適しているのか」など、現地の文化や習慣を踏まえてプロジェクトを進めていく必要があります。場合によっては、宗教的な配慮も必要になるでしょう。つまり、日本の常識をあてはめることができないのです。
これらの課題をクリアできる人材こそ、今、化粧品業界に求められている人材そのものです。実際に私たちが受けるヘッドハンティング依頼では、これらの要素を条件として提示されることが少なくありません。
国内市場の低迷にあえぎ、海外に活路を見いだす化粧品業界。そこでは、世界を相手に活躍することが期待できるグローバル人材が求められているのです。

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