ヘッドハンティング研究

アラフォーからでも可能!異業界への転職パターン

アラフォーからでも可能!異業界への転職パターン

30代も半ばを過ぎると求人が激減するので、少し前までであれば「35歳、転職限界説」がまことしやかに囁かれたものだ。今でも若いほどに求人数が多い傾向は変わりないが、直近の求人倍率の上昇は、若手だけでなく30代後半から40代にかけてのミドル層にも追い風となっている。また、リーマンショックで大規模リストラを行った企業の中には、「今後の人員補充は即戦力中心で」という企業が増えており、ミドルの即戦力人材により脚光が当たっている。

ただ、そんな追い風があっても、30代後半や40代といったミドル層のビジネスマンがお門違いな異業種へたやすくキャリアチェンジできるわけではない。人脈や知識など業界内特有のスキルを新たに身に付ける必要があるので、吸収力が高い30代前半までがやはり重宝される。アラフォー以降の転職は同業他社での行き来が大多数なのが現状だ。そのような中でも異業界へヘッドハンティングされるミドル層もいる。一体どのような人材なのか?数々の事例を振りかえってみると、「ノウハウを他業界へ伝承する」ものがほとんどであることがわかる。今回は、その中でもヘッドハンティングで良くある3つのパターンを紹介したい。

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ミドルハンティングとは

老舗企業へのノウハウ伝承パターン

創業100年以上の歴史がある地方の老舗醤油会社から、「CMO(Chief Marketing Officer)」のヘッドハンティングを依頼されたことがある。地域密着、店舗販売のみで商売して来たこの会社は、販売チャネルを増やしたいと「インターネットを活用した顧客開拓責任者」の採用を希望していた。この案件で最終候補者となり移籍したのは、東京にある大手消費財メーカーでWEBマーケティングを担当していた40代前半の男性。今ではその醤油会社で、古き良き伝統の味を日本全土に広める役割を果たしている。

伝統技術を次の世代に伝承する本来の技術伝承とは逆で、老舗企業に新たな技術やノウハウを植え込む、言わば「逆・技術伝承」のニーズは意外にも多い。老舗企業も生き残りに必死である。だから、新たな技術やノウハウを吸収して成長したいという企業もある。ただ、自社公募ではなかなか良い人が集まらないので、我々のようなヘッドハンティング会社を利用されるわけだ。この場合、先端技術を活用して旧態依然のやり方に革新を起す必要があり、その旗振り役として入る転職者は経験が豊富な40代前後が最適となる。

隣接業界へのノウハウ伝承パターン

老人ホームの新設を積極的に行う企業から、「ホテルの支配人」をヘッドハンティングして欲しいという依頼を受けたことがある。そのポジションは、介護施設長。新たに建設する施設は高級老人ホームである為、高い接客レベルを確立したいというニーズである。この案件で最終候補者となり転職したのは、北海道のリゾートホテルの支配人だった。

この事例のように「ハコものビジネス」は30代後半以降も異業種間の行き来が多い。空間にお客を呼び込むにあたって、他の業態で行っているサービスや接客方法は参考になる為だ。上記の例のほかにも、テーマパークの企画担当がショッピングモールへ移籍する事例などがあげられる。

営業部隊へのノウハウ伝承パターン

大手工作機器メーカーから「自動車開発の技術者」のヘッドハンティング依頼を受けたことがある。その候補者の配属先は自動車業界への営業担当(技術営業)であった。顧客となる業界特有の技術、慣習はその当事者が最も良く理解しているから、相手の懐深く入れる。ユーザー側の技術者を取り込み、そして技術営業として活用することで、顧客ニーズに踏み込んだ提案力獲得を狙った事例だった。

クライアント先の業界は今と同じだが、所属する企業は別業界というパターン。この場合もクライアントとなる業界での経験豊富なミドル人材のニーズが多い。ただ、候補者になる人材は、まさかのキャリアチェンジなので、求人が公開されていたとしてもイメージできない。そこで、われわれヘッドハンターが候補者にこの情報を直接運んで行くのだ。実は我々人材ビジネスの世界でも同じように、SE出身者をIT業界の転職コンサルタントに採用したり、メーカーの技術者をメーカーの転職コンサルタントに採用したりする。SEや技術者は限られた世界でのスキル・経験と思われがちだが、意外な進路である。

以上、よくある3つのパターンを紹介してきたが、いずれも現職の経験やノウハウは活かされていることがおわかりだろう。30代前半まではポテンシャルを重視する企業もまだまだ存在する。一方で30代も後半になってくると、もうこれは自分のやってきた分野のプロフェッショナルでないとニーズがない。ただ、そのプロフェッショナリティが高ければ、アラフォーを過ぎても異業界で活躍できる可能性があるというわけである。

(※この記事はアイティメディア社の「誠ブログ」に寄稿したものです)

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