ホームラン

今の自分があるのは、当然、多くの方との出会いにより、
成り立っているわけでありますが、この人との出会いがなければ
今の私は存在しなかったであろう、という人がいます。

その人とは現読売ジャイアンツのコーチである篠塚和典さんであります。

出会いと書いたものの、実は実際に篠塚さんにお会いしことは
一度もありません。

篠塚さんが選手時代、野球少年であった私が
熱狂的大ファンであっただけのことであります。

篠塚さんの右に左に打ち分ける広角打法、しなやかなバッティングフォーム、そして、華麗なフットワークと守備。
篠塚さんの一つ一つの動作がとてもカッコよく、寝ても覚めても篠塚選手!という程、私にとって憧れの選手でありました。

少年時代に将来の夢はと聞かれたら、
「ジャイアンツに入って、篠塚選手と2遊間コンビを組む」と口癖のように答えており、小学校、中学校の文集にもいつもそう書いていました。

そんな野球少年であった私は中学に入学すると、
何の迷いもなく、頭を丸め野球部に入部しました。

が、しかしであります・・・。

いきなりかよ!と思わず言いたくなるかと思うのですが、
入部して早々、野球部のきつい練習に耐えられないと感じてしまったのであります。
1ヶ月も経過していなかったと思います。

当時、私はとても体が小さく、中学入学当時の身長が約140cm、
しかも、痩せぽっちという体格。

そんな中、入部仕立ての1年生の練習は、
グランド30周、階段の上り下りといった
ハードなものばかりであったのです。

あれだけプロ野球選手になりたいと言っていながらも
1ヶ月も持たずに退部となるのはなんとも情けない事態でありますが、
もう限界だと思ったのでありました。

そして、本当に野球部を続けることを諦め、
自分の中で辞めることを決心し、野球部を退部することを涙ながらに母親に打ち明けました。

そんな時、ついてるテレビを見るといつもの通り、
後楽園球場でやっている巨人戦が放映されていました。

遂に母親にも気持ちを伝えた私は、
「もう、これでおしまいなんだな・・・。これできつい練習からも開放されるな・・・。でも、これから落ちこぼれの道を辿ってしまうことになるのかな・・・。」
などなどと心の中で思っていたのですが、
そうした時にふと画面に目を戻すと、バッターボックスに篠塚選手が入ろうとしていたのです。

そして、私は心の中で「よし、もう辞めるんだ、決心しよう」と思い、
最後の覚悟を決め、次のことを母親に告げました。

「もし、ここで篠塚がホームランを打ったら、野球部を続けるけど、
 ホームランを打たなかったら、たとえヒットであろうが何だろうが、俺、辞めるからね・・・」っと。

篠塚選手といえば、常に打率3割を超える好打者でありますが、
決してホームランバッターではなく年間でも10本にみたないシーズンが
ほとんどというバッターでありました。

その時の私の心の中では「篠塚選手はホームランバッターではないから、絶対にここで打つことはない、だから、これでもう俺は辞めるんだ」と考え、辞めるための決心をしたかったための発言でありました。

そして、再び画面に目を戻すとピッチャーが振りかぶり、
正に篠塚選手に対してボールを投げ込むところでありました。

すっ、するとであります・・・。

ピッチャーが投げたその瞬間・・・。

「カキーン!!」と快音が響き、打球がぐんぐんと伸び、なんとなんとライトスタンドに吸い込まれていったのでありました。

何ということが起こったんだろう!一瞬、目を疑いたくなる気持ちでありましたが、篠塚選手がホームベースに辿り着いたとき、私の中の全ての胸のつかえが、スーっと取れたのです。

そして、出た言葉が「俺、やるよ!野球部を続けるよ!」でありました。

もう、やるしかないと思ったのです。
そして、これはきっと「誠司君(私)、頑張るんだぞ!」と篠塚選手からのメッセージなんだと思いそれをしっかりと受け止めました。

それから、中学での3年間、野球部を続けることができ、
困難を乗り越える力を養うことができたのでありました。

もし、あの時、篠塚選手がホームランを打たなかったら、
私は困難や苦労に立ち向かうことなく逃げてばかりの弱い人間になっていたかもしれません。

あの篠塚選手のホームランがなければ、
今の私は間違いなく存在していなかったのです。

いつか篠塚さんに直接お会いして、
「ありがとうございました」とお伝えしたいと思っています。


企業における環境部とは  7:5:3

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